「バエ」は「映え」だ。去年あたりから「インスタ映え」という言葉が流行って誰もがやたらと”バエ”を狙って写真を撮るようになった。スマホ写真など所詮はツイッターの「○○なう」みたいなもので”ここにいますよ”的な証拠写真だったのが、バエを狙うようになってちょっと世間は過熱気味だ。
そもそもバエってなんだろう?スマホ写真に限らず綺麗な写真というのはたくさんある。海や山、朝焼けや夕焼けを撮った写真、家族や子供のほんのちょっとしたしぐさを切り取ったスナップ写真、野生動物や花の写真などわざわざ写真展に行かなくても今ではインターネット上にもたくさん公開されている。その中で何がいいと思うかはそれぞれの好みであって一律の共通した基準はない。もしそんなルールがあるとすればそれは審査員の好みの押し付けでしかない。世界で誰の絵が一番美しいのかと訊くようなものである。
インスタなどではたくさんの人から「いいね!」が欲しくて注目されそうな写真を撮ってアップする。どういう写真に「いいね!」が集まるのかを探してみると、今流行で話題になっているものやなかなか手に入らないもの、きわめて高額なもの、派手なもの、キワモノのような言ってみれば目立つものだ。美味しくなさそうな誰も食べたがらないようなものでも派手で目立てばたくさんの人が「いいね!」する。きっとその誰もが”いいね!”なんて全く思っていないのに派手なゲテモノには「いいね!」する。これらの写真は決して映え(はえ)ているわけではない。でも今は「バエて」いるのだ。
もともとは素敵な写真を見せて自分の体験を他の人と共有することが目的だったのだろうが今となっては「いいね!」をたくさんもらうことだけが目的になっている。食べ物の写真も、注文して写真を撮ったら食べずに残して帰る人もいるという。もはや料理の味などどうでもいいわけだ。罰当たりなことだが店側も”バエる”写真を撮らせるためだけに誰も喜ばないような「唐揚げチョコレートパフェ」のようなゲテモノを出すというのだからどっちもどっちである。そのうちどちらにも天罰が下るだろう。
何にために「いいね!」が欲しいのか、なんでそんなものに「いいね!」するのか。誰にも共感なんてされていないのにどうしてそんなに単純に”繋がり”を感じるのか。本当に楽しく、本当に美味しくなければ「ダメだね!」じゃないのかとオヤジは思うのだが、世の中はいつも狂っている。
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