がんばれ!

コミニュケーション

「頑張れって言ってくれないんですか?」
「・・・」
「たまに夜、叫んでるじゃないですか」
「・・・違うって。頑張れってのは人に言う言葉じゃない。
 あれは自分に言ってるんだ」

映画「風に立つライオン」の中でアフリカ・ケニアとスーダン(現在の南スーダン)国境の紛争地域にある病院で国際医療に派遣された医師・コウイチロウ(大沢たかお)と看護婦のワカコ(石原さとみ)の会話だ。任期を終えてナイロビの研究所に戻るコウイチロウに、現地に残って医療を続ける同僚のワカコが訊く。「頑張れって言ってくれないんですか?」と。

アフリカの紛争地帯では兵士の中の少年兵が多くいるのだという。その多くは家族を皆殺しにされて麻薬漬けにされて少年兵にされる。兵士になれない幼少の子供は手を繋いで横一列になって地雷原を歩かされる。地雷を見つけるためだ。もちろん地雷に触れれば吹き飛ばされて手足を失うかもしれないし運が悪ければ命を落とす。

日本から研究のためにナイロビに赴いたコウイチロウは現地の病院で地元住民の治療にあたっていたが、ある日国境近くの野戦病院に2ヶ月間の任期で派遣されることになった。現地では少年兵も普通に戦闘に加えられた。敵兵に撃たれたりロケット弾で傷ついた兵士の手足を切断したり銃創の手当てをするのが主な治療だった。その日の治療が終わるとコウイチロウは院長に尋ねる。

コウイチロウ「朝起きて自分の手がなくなっていた子供になんと言えば?」
院長    「・・・、I don’t know」

そんな戦地の病院で傷ついた兵士や子供の治療に当たる中で無残な現実を見て心が折れそうになり、自分を奮い立たせるために夜、一人で外に出ては大声で闇に向かって叫んでいた、「がんばれーっ!」

大災害が起きて多くの犠牲者や被災者が出ると当事者は生き残るためにその日その日を生き抜くことに精一杯になる。現地で必死に頑張って生きている人に向かって「頑張ってください」と言っても、これ以上何を頑張れというんだと文句を言う人がいる。たぶんそれは今まで一度も死ぬ気になって頑張ったことのない人だ。本当に頑張っている人は愚痴など口にしないし自分を甘やかしたりしない。

確かに自分が頑張って「もうダメかもしれない」と思っているときに「頑張れ!」と言われても”もうこれ以上頑張れないかも”と思うときはある。でも自分のことを応援してくれる人に「頑張れ!」と言われれば嬉しくなって「ありがとうございます、頑張ります!」と応えるのではないだろうか。

言われた人はそんな時に泣き言を言っていた自分に向かって「もっと頑張れ!」と叫ぶのかもしれない。自分を奮い立たせるために。そして今は誰もがみんな頑張っている。
「頑張れー!」

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