お客さんの波

コミニュケーション

以前にスポーツショップやレストランで働いていた頃から思っていたことだが、どういう訳かお客さんは同じタイミングに集中してやってくることが多い。お店をやっている人は経験があると思うが、お店を開けていてもダーレもやって来ない時間というのはある。昼過ぎから夕方近くまで一人も来なくて「今日はダメだなぁ」なんて思っていると17時過ぎになってバタバタとお客さんがやって来てお店の中でてんやわんやということもあった。どうせならバラけて来てくれれば丁寧に接客できたのになぁなんて思ったりもしていた。それにしてもお客さんの来店にはどうして波ができるんだろう。

レストランで週末の夜にお客さんが多いのは分かる。週末に買い物客が増えるのもわかる。全体的にならしてみればそういう時には確かにお客さんは多い。やはり翌日が休みならゆっくりとした気分で食事ができるし、買い物に行くなら週末の休みにのんびりと出かけたいと誰もが思う。ボクだってそうだ。平日の仕事終わりに外食をするのは何となく急かされているような気分になるし、早く帰って明日の準備をしなくちゃと思う。敢えてそんな時に出掛けたいとは思わない。

じゃあみんなが出掛けたがる週末のお店は1日中混雑しているかといえば、混むときはごった返したりするが時折スポッと”忙中閑あり”状態で急にお客さんが引いて30分も1時間もヒマになったりする。そのくせまた次の波がやって来るとごった返してバタバタと忙しくなるのだ。当時、お店のスタッフともその原因について考えたりしたのだが、結局、結論は出なかったように記憶している。誰かお客さんがお店にいれば次のお客さんの呼び水になるんじゃないかとか、みんな考えることは同じなんだとか、仲間同士で示し合わせて来るんだとか、どれも根拠のない想像だ。

どのお客さんも知り合い同士ではなさそうだし、外からは見えない店の奥の方にお客さんがいても来るときは続々とやってくるし、同じことを考えるにしても5分や10分の短いタイミングで「そうだ、行こう!」と思うのは無理がある。それにお客さんたちがお店にやって来る理由はそれぞれにバラバラなのだ。それなのに短時間に集中してしまう。

だからそんなときに来てくれたのが馴染みのお客さんだったりすると、他のお客さんが集中しているときには丁寧に話を聞くこともできないので、その波が引いてしまうまでお店の中の商品など見て時間を潰してもらうようにしていた。そうすればゆっくりと相談を受けたり世間話をしたりする余裕も出てくる。接客業の人は基本的にお客さんと話をするのが好きな人ばかりなので、できる事なら商売抜きでも話をしたいと思っている人が多い。その結果、それが売り上げに繋がることもあるので余計に楽しいわけだ。

だから接客業ではなくなった今でもボクは、何かの用事があって客としてお店に入った時に他のお客さんでごった返していたなら、そのお客さんの波が引くまで待つことにしている。すると混んでいた時にはバタバタしていた店員さんも、波が引いた後にはゆっくりと話をしてくれることが多い。バーや寿司屋、天ぷら屋のカウンターでもそうだ。マスターに余裕が出てくると「試しに作ってみたんだけど食べてみて」と試食を勧められることもある。普段はお客さんの話を聞くばかりなので、自分から話をするのが楽しいらしい。

そうやって接客をする側とお客側の両方の視点から眺めると、一つのことも違う方法から眺めることができる。「自分はお客様だから」と上から目線で見るだけではなく、接客する側の気持ちになってサービスを受けてみると、意外なところから興味深い話を聞くことができたりする。もちろん接客する側の立場になって考えるからといって、いい加減なサービスに甘んじろということではない。相手にとってもお客がどういう気持ちでサービスを受けているのかを知ることは大切なことだと思っているはずだから、言うべきことはしっかりと言ったほうがいい。それがタダのクレームだと受け取られてしまったなら、それは自分の話し方がまだ未熟だったのだと思うようにしている。

人と人はゆっくりと話をすることで、お互いの気持ちを慮ることができる場合が多い。せっかく出会ったのなら通り一遍の「いらっしゃいませ!」から一歩踏み込んで、コミュニケーションを楽しめるようになりたいと思っている。

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