新型コロナウイルスが日本国内で感染拡大を始めてから1年ほどになる。その間に2度の緊急事態宣言があった一方でいわゆる「Go Toキャンペーン」などもあり、感染は拡大したり勢いがおさまったりを繰り返してきた。もちろん一刻も早く感染が収束して元通りの生活や経済が戻ってくることが理想ではあるが、なんせ頭脳を持たないウイルス相手のことなので今なお予断を許さない状況が続いている。
その間に経済的な打撃を受けて廃業を余儀なくされた飲食業や観光業をはじめとした関連産業も多いと思う。自分が辛い思いをすれば誰かのせいにしたくなる気持ちもわからないではないが、犯人探しをして無理やり誰かを犯人に祭り上げたとしてもこの社会は簡単には元どおりにはならない。いやもしかしたら永遠に元には戻らないかもしれない。
今まではグルグルと同じところを回り続けてきたが、これを機会にポイントが切り替わって別の方角に進み始めるキッカケにさえなりうるのではないかと思っている。今のそれぞれの状況にもよるが「いつになったら元に戻るのか」ばかりを考えるのではなく今は、「これからは何がいいのかを考えて変革すること」も必要になるかもしれない。元に戻るのを指を咥えて待っていてもいつになっても元に戻らないかもしれないのだ。
基本に戻れば、そもそも元に戻すことに意味があるのかを考えて見ることも必要だ。10年前に起きた東日本大震災で壊滅状態になった町がいくつもある。こんなことを言うと誤解を招くかもしれないが、壊滅状態になった町を津波に襲われる前の状態に戻すことがそこに住んでいる人たちの願いだったのだろうか。
外部の人間が無責任なことを言うのは許されないが、震災前にも過疎化や高齢化、人口流出などが大きな問題になっていた町だってある。産業が衰退し、そのために原子力発電所を誘致するしかなかったのではないのか。不幸にして大震災の津波でその原発は破壊され福島県をはじめとした地域の住民は大きな犠牲を払わされた。
その歴史をもう一度なぞっても同じことが繰り返されていく。地元に住む、またはようやく帰還を果たした人たちもそのことを十分分かった上で復興を進めているのだろうと思う。ところがマスコミが取り上げるのは「まだまだ元には戻っていない」と言う声ばかりだ。単に元に戻すのではない。前よりもっといい暮らしやすく未来のある地域を作り上げるために地元の人は努力している。
コロナも大震災も大きな犠牲を払ったが「被害を受けた」「損した」とうなだれているだけでは何も始まらない。10年前からの被災地の復興をお手本にしながら、「これからは何がいいのか」を考えるチャンスなのではないだろうか。
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