あなたはなぜそれを選ぶのですか?

心理学

ある日の昼下がり、午前中の得意先回りが長引いたので少し遅い時間になってからランチを食べることにした。お店を探しながら駅前の商店街を歩いているとちょっと雰囲気のいい喫茶店を見つけたので入ってみる。席に着くとウエイトレスがお水とおしぼり、メニューを持ってやってきた。周りを見るとどうやらミックスフライ定食が人気のようだ。しかし僕は昨夜もアジフライを食べたので今日は生姜焼きを食べたい気分になっている。その時、隣のテーブルに偶然運ばれてきたミックスフライと生姜焼きが目に入った。なんとミックスフライには大ぶりのカキフライが2個も入っている。そしてエビフライも予想以上に豪華だ。これで780円はかなり魅力的だ。

生姜焼きもそれなりのボリュームがあって美味しそうだが、原価から考えるとミックスフライの方が断然お得なような気がする。ミックスフライにはアジフライも入っていたが、どうしても”お得感”には勝てずに僕はミックスフライ定食を注文した。やがてテーブルに運ばれてきた料理を食べ始めたのだが、やはり昨夜のフライの味が思い出されてやや食傷気味である。隣で食べている生姜焼きを横目で見ると生姜のさわやかな香りが食欲をそそる。「やっぱり生姜焼きにしておけばよかったな」と思いながらミックスフライ定食を少し残してしまった。浅ましく損得だけで決めたそのツケが廻ってきたのかもしれない。

料理にしろ他のものにしろ、何かを選ぶときには損か得かだけではない。自分がそれを食べたいか食べたくないか、自分に本当に必要なのか、心の底から欲しいと思っているのかである。いくらお買い得だからといっても必要のないものはいらない。そもそも必要がないということは使わないということなのだ。いつもは高いものが仮にその日は特別に安く売られていたとしても、使いもしないものにお金を出すのは結局は損ではないのか。しかしボクも過去には要りもしないものを「お買い得だから」という理由で買ったことが何度もある。しかし必要のないものはやはり使う機会もほとんどなく引き出しの奥や倉庫にしまい込んだままだ。ハッキリ言ってお金と保管場所の無駄遣いだった。

数年前から、そんないわゆる”ガラクタ”は「欲しい!」という人がいれば譲っている。最近では人気のネットオークションやメルカリのような中古品出品サイトも数多くあるのでそこで売り飛ばすというテもあるが、身近に欲しいという人がいるのならあげてしまった方がお互いにお得な気がしている。相手は欲しいと思ったものをタダで手に入れられるわけだし、ボクは無駄に塞がっていたスペースを開放して断捨離ができるのだから。あげた相手が「タダなら得だから」と思って受け取っただけだとしても、「やっぱり要らなかったわ」と思えば今度は自分が誰かにあげてしまうこともできる。そうやって仲間内の間をグルグルと廻っているものもいくつかあるようだ。”面白そうだけどやっぱり必要ない”物は予想以上に多いらしい。

それにしても人はなぜコスパばかりを考えて(その場合のパフォーマンスは多くの場合原価だけ)何かを手に入れようとするのだろう。必要なものならできるだけ安く買いたいと思うのは自然だ。しかし必要かどうかわからない、もしくはたぶん必要ないと思うものでも”お得なら”手に入れようとする。その結果ほとんどの場合は結果的に”損”をしている。
それでも毎年お正月になると百貨店で数万円で売り出される”何が入っているかわからない福袋”にも「お得なのよぉー!」と言って多くの人が群がるのだ。

人の心はここでも不合理である。

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