「経済波及効果」という言葉は聞いたことがあるだろう。社会でオリンピックなどのアクションが起きた時に、新たに発生した需要(消費)がまた別の需要を生むように連鎖的に発生して、それら全体でどれだけの需要を生み出したのかということだ。これを計算するためには指標となる”産業連関表”というものがあって、一つの産業(例えば二次産業)で新たな需要が発生した時に他の産業(例えば三次産業)ではどれくらいの波及効果が見込まれるのかを一覧にしたものである。
例えば東京でオリンピックを開催すれば、競技場や選手村、新しい道路や鉄道などを建設することになる。そのためにそこで働く人が必要になって新しい雇用が生まれる。そこで支払った給料がどれくらいの割合で消費に回るのかといった、巡り巡って使われるお金がどれくらいになるのかが計算できるというわけだ。新しい建物や道路を作るためにはそのための原材料も必要になる。家具や線路・信号機や電線だって必要だ。関連している産業でも新たな需要が生まれることになる。
しかしすべての産業でいくらの需要が生まれるのかなど事細かにはわからないから、限りなくザックリとした金額だ。だから計算する人によってその金額は大きく異なってくるのが普通である。今回の10連休による観光などの旅行や買い物の増加などによっておよそ2兆円の波及効果があるという人がいる。一方で工場などの操業日数が減って生産額が減ったり、金融や医療・福祉分野でも休日が増えるために波及効果はマイナスになるという人もいる。言ってみればどちらもドンブリ勘定なので本当のところはわからない。
では今回の「平成」から「令和」への改元による経済効果はどれくらいのものなのだろう。関連分野が広すぎて分からないという経済学者もいるが、それはオリンピックだってなんだって同じことだ。ある人によれば7000億円の経済効果があるとも言われるが、どこまでを改元による影響としているのかはわからない。「令和」と名前の入った飴やどら焼き、クリアフォルダなどのアメニティグッズの製造や販売などはわかるとしても、お伊勢参りの増加が10連休の影響なのか改元の影響なのかを調べることは非常に困難だ。恐らく双方が都合よく「こっちの影響に違いない」と決めつけて計算する経済学者の姿が目に浮かぶようだ。
それでも「景気が良くなった!」とたくさんの人がハッピーな気持ちになれるのならそれも意味あることなのだろう。あなたは今回の10連休や「令和」を迎えたことで、いつもの年のゴールデンウィークとは違った過ごし方をしただろうか。国や世界レベルで見た経済波及効果は眉唾ものだが、自分の家庭での波及効果は案外簡単に計算できるかもしれない。もっともそれをやったから幸せになったのかどうかはそれぞれの人が感じることで、結局はどうでもいいことになってしまうのだろうか。
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