ハンコ

昭和の時代に勤めていた会社。当時は電子メールどころかパソコンもほとんど普及しておらず、業務の決裁は紙の稟議書で行っていた。さすがにワープロは導入されていたが、プリントした稟議書に押印欄を糊で貼り付けて回覧していた。

そんなある日、進めていたプロジェクトに問題が発生してかなりの額の損失が出た。善後策を話し合うために常務取締役をトップとした対策会議が開かれた。会議の席上、このプロジェクトを継続しても問題を解決できる目処が立たないためプロジェクト自体を中止しようということになった。
その時にある中間管理職が「そもそも誰が始めようと言い出したんだ!」と犯人探しを始めた。稟議書を書いたのは誰かということである。当然、稟議書自体を起稿したのは役職もないペーペーの平社員である。「そいつを呼んでこい!」と中間管理職氏が怒鳴った。いやいや、その稟議書には係長から課長、その中間管理職氏を含めた部長、役員までの印鑑が押されて決裁されている。印鑑を押した全員がそれを見て決済しているのである。最後の欄には常務取締役の印鑑まで…。
「恐れながら、これは皆さんが認めたということではないんですか?」と若い係長が発言した。するとそれまで黙っていた常務がぼそっと言った。

「これは認めたというハンコではない。見たというハンコだ」

しばらくして僕はこの会社を辞めた。

それ、本当?

何かセンセーショナルな事件が起こると、マスコミは次から次へと似たような事件を探してきては「また〇〇が起こりました」といって得意気に報道します。それを見ているだけの人はあたかも急にそんな事件が急激に増加して起こり始めたのだと思いこんでしまいます。お年寄りの自動車事故、スマホ運転の自転車死亡事故、若者の猟奇殺人、いじめ自殺、海水浴場のサメ出没事件(笑)などなど。一度ニュースになって視聴率が取れるとわかった途端に”これでもかっ!”というほどしつこく似たような事件を探してきます。ちょっと前に流行った「あおり運転」。東名高速道路での死亡事故の犯人逮捕がニュースになって、それからしばらくは連日のように全国で”あおり運転”の事件を探し出していましたが、車を運転する人ならご存知のように、そんなのは日常茶飯事です。たまたま大きな事故にならないから騒がれないだけで、1日車を運転していれば5回や10回はそんな場面に出くわします。
「海水浴場に人食いサメ出没!」なんていうセンセーショナルなキャッチで恐怖のイメージを煽りますが(ここでもアオリ:笑)漁師やスキューバダイビングをしている人なら御存知の通り、相模湾だって数100メートル沖に出ればサメだって泳いでいますよ。このあたりでは波打ち際まで来ることは殆どありませんが、ヘリコプターでちょっと探せば見つかります。探すから見つかっちゃうんですね。それなのに「人食いサメが急増!」なんていう”統計データ”まで出てきます。去年までは探していなかったから見つからなかっただけなのに今年から急に増えたような言い方をするわけです。それもこれも視聴率が取れて週刊誌が売れるから。
以前にちょっと調べた事があるんですが、殺人事件の発生件数だって60年前のほうが多かったのですよ。だからといって大幅に減っているわけでもない。つまりは横ばいなんです。
そんな”煽り文句”に踊らされないようにしたいものですね。

まっくろけのケ

キタサンブラックという競馬馬をご存知でしょうか? 私も昨年たまたま知ったのですが、歌手の北島三郎さんが持っている馬の名前なのだそうです。以前からサブちゃんの馬好きの噂は聞いておりましたが、最初に馬主になってから50年以上も馬を持ち続けているのだそうです。
ところで「キタサンブラック」という名前を聞いて「なるほどなぁ」と思ったのは私だけではないはずです。キタサンはやっぱり郎のことでしょう。じゃあブラックは?
私が子供の頃、テレビでBicボールペンのCMが流れていました。何でテレビでボールペンのCM?と思われる方もいらっしゃるでしょうが、当時のボールペンはまだ品質も悪く、インクがダマになって出てきたり、すぐにボールが回転しなくなって書けなくなってしまったりというのがアタリマエでした。ですから優れたボールペンを宣伝するのはメーカーだけでなく消費者にとっても大きなメリットだったわけです。
そのCMに登場して「まっくろけのケ♪」と歌っていたのが若き日のサブちゃんです。そこでサブちゃんについたあだ名が「ミスターまっくろけ」。色黒の地顔とおどけた表情は当時の子供にも人気があって、学校に行ってもみんなが真似をして歌ったりしたほどでした。

そうだよね、やっぱりキタサンときたらブラックだよね、と当時を懐かしく思い出したのでした。

歩きスマホをやめなさい、バカに見えるから

■ 「気くばりのすすめ」を知っていますか?
もう34年も前のことです。当時のNHKの人気アナウンサーだった鈴木健二さんが書かれた本です。最近になってその回顧録のようなものが出版され、Amazonのkindleで無料読み放題になっていましたのでちょっと読んでみました。鈴木健二さんは、NHKのアナウンサーらしからぬ軽妙な語り口と著書の中に著されるウイットに富んだ文章は当時から非常な人気で、ベストセラー本をいくつも著されたほどです。今では80歳を通り過ぎ90歳を前に隠居生活をされているようですが、隠居なのに本を著すとは、そのバイタリティに驚くばかりです。 “歩きスマホをやめなさい、バカに見えるから” の続きを読む

信号待ち

横断歩道の赤信号を待っていました。隣で待っていた自転車の中年女性が急に道路へ飛び出しました。でも歩行者信号はまだ赤です。急ブレーキとキーッというタイヤの軋む音。その女性は走ってきた乗用車と接触して道路に転がりました。車側の信号はまだ青です。どう見ても自転車女性の信号無視です。しばらくして車の流れは止まり歩行者信号は青に変わります。僕は横断歩道を渡り始めました。幸い女性は手足を擦りむいた程度で軽傷だったようです。ここは丁字路の交差点に設けられた横断歩道で、自動車側の信号がいわゆる”時差式”信号機になっていました。スマホに夢中になっていたその女性はチラチラと横の自動車用の信号機が赤になるのを見て見切り発車して車に轢かれたようでした。
同じように歩行者信号が青に変わるまで待つことなく、横にある車用信号機が赤になった途端に車道に飛び出す人は頻繁に見かけます。車はそれなりにスピードを出していますから黄色信号で交差点に侵入してくるのは普通です。中には交差点の中で赤信号に変わってしまうこともあります。それでも車は走ってきます。信号の変わりばなは交差点が非常に危険な状態です。それでも赤信号を無視して渡る歩行者は後を絶ちません。
考えてもみてください。見切り発車して稼げる(得をする?)時間はどれくらいですか?たぶん数秒、ほとんどの場合はコンマ何秒です。無理してその時間を稼いで、その人は何に使うつもりなのでしょうか? 陸上競技の選手がスタートダッシュするのならわかります。でも普段の生活の中でコンマ数秒だけ早く目的地に着いたところで、何ができるというのでしょうか?

信号が青から黄色になり、赤に変わります。その時から再び青になるまでの時間を測ってみてください。殆どの場合は30秒もないのです。あなたは節約したと思っているその30秒の間に何ができますか? 日々の暮らしの中ではほとんど意味を持たない数秒の時間を惜しんで、リスクだけを大きくして何が得なのでしょう?

合ってますか?

このところ月イチで仕事関係のセミナーに通っています。セミナーには30代くらいから60代くらいまでの人たちが集まります。ここでは、それぞれが持ち寄った課題とそれに対する提案が示されて、それに対するレビューを行うという流れです。
そこでいつも不思議に思うのは自分の提案を発表した後に「これで合っていますか?」と訊く人が少なからずいるということです。たぶんその人はこれまで日本の教育の中でずーっと試験勉強ばかりをしてきて、すべての問題には○×がつけられるものだと思っているのでしょう。
この世の中は正解と不正解だけで出来ているわけではありません。そもそも正解などどこにもないのです。

自分では何も提案できずに「どうしたらいいですか?」という答えだけを求めてくる人もたくさんいます。
食べ物に困っている人に魚をめぐんであげることは簡単です。しかしもらった魚は食べてしまえばなくなります。
その人に必要なのは魚そのものではなく魚を釣る道具と知恵ではないのでしょうか? 道具と知恵があれば、その人はこの先ずっと、自分の力で行きていけるのですから。その知恵を学びに来ているのに、魚だけを欲しがるというのは、一体どういうことなのでしょう?

毛沢東はモータクトーなのに
なぜキンダイチューはキムデジュンになったのか?

いつも不思議に思っていた。子供の頃、日本に来た時に誘拐されちゃったのは金大中(キンダイチュー)氏だった。当時はテレビのニュースでもキンダイチューと連呼していた。そしてしばらく名前を聞かないなーと思っていたら、いつの間にか金大中はキムデジュンになっていた。最初は名前が変わったのかと思ったが、そういう訳でもないらしい。
しかし同じく漢字を使っている中国人は毛沢東はモータクトーのままだし習近平はシューキンペーである。最近の新聞では習近平をシーチンピンと表記するところも出てきたが、いきなりそう言われても誰のことだかわからない。最近、色々と話題に欠かない北朝鮮の独裁者一家は金日成、金正日、金正恩と三世代にわたっているが、昔は誰もがキンニッセーと呼んでいたのに最近はキムイルソンである。でもその息子の金正日をキンセージツと呼んでいるのは聞いたことがないし金正恩をキンセーオンなどは一度も耳にしたことがない。
どうしてなんでしょうね? と思ってネットを検索したら、中国とは日中国交正常化の時に田中角栄と周恩来(シューオンライ)が取り決めたんだそうである。一方、朝鮮とは全斗煥(ゼントカン)が日本に来た時に日本政府と”お互いに現地読み”することに決めたのだとか。

「どっちがいいか」と言われれば、いいも悪いもないのだろうけれど、名前(固有名詞)なんだから本来の現地の発音に近づけるのがスジのような気がする(意見には個人差があります)。

だってフィギアスケートの国際大会なんかで中国選手が出てきた時に「シュー・オンライー!」なんて呼ばれても自分のことだとは思わないと思うんですよね。だって名前だもの。

秘密のケンミンSHOW

民放で平日の夜にやっている「秘密のケンミンSHOW」という番組をご存知だろうか? 全国各地の名物や不思議な風習などを面白おかしく紹介するバラエティ番組である。最もその殆どはB級郷土料理であり、名古屋のあんかけスパゲティだったり群馬県太田市のナスで作ったうなぎ(?)の蒲焼(太田市には数年住んでいたがお目にかかったことはなかった)だったりして、スタジオに居るひな壇芸人と司会のみのもんたさんがそれらを試食をして「旨いっ!」というだけなんだが、不思議な事に神奈川県の出番は非常に少ない。北関東の群馬・栃木・茨城などは毎回のように取り上げられていて笑いとる美味しい位置にいるのに、東京や神奈川、千葉はほとんど出番がなく寂しい思いをしている。思うにこれは、東京周辺には全国各地の人が集まっており東京土着の民族が絶滅危惧種になっているせいなんだと思う。
考えてもみて欲しい。東京の名物って何?雷おこし?東京タワー?浅草寺?藪そば?もんなものは日本人ならほとんどの人が知っていて、もう珍しくもなんともないのである。神奈川の名物というと最近必ず出てくるのが生シラス丼である。でもこの辺り(相模湾周辺)でもそんなにしょっちゅう食べるものではない。何年に1回食べるかどうかである。それに美味しくない(意見には個人差があります)。ボクはシラスなら釜揚げのほうが美味しいと思っている。崎陽軒のシウマイはしょっちゅう食べるが、それくらいしかない。大船軒の鯵の押し寿司は昔からあるが、1,2回食べたことがある程度である。郷土料理なんてほとんど聞かない。

湘南海岸?もう何十年も行っていない。たぶん北関東や埼玉の人のほうがよく知っているんじゃないかな?
自慢できるものって、何にもないなぁ。あぁ大山くらいかな(笑)

心に刺さる、つかむ、
心に残るキャッチコピーの創作術(2)

■ キャッチコピーはサルでも書ける!?
書店に行けば「グッとくるキャッチコピーの書き方」なんていう本はいくらでも置いてあります。先週もお話したように、成功した(売れた)コピーを見ても発表された後から見れば誰でも考えつくようなものが多いですよね。でも売れたコピーなんてそんなにあるものじゃないんです。とりすなんかが年間通していろいろなCMや広告、雑誌・週刊誌、新聞、ネットを年がら年中漁りまわっていても「これは結構イケてるなぁ」と思うコピーは年間に10数本。その中でも実際に売れたコピーなんて数本です。それこそ広告界のトップコピーライターたちが書いたものであってもです。ほとんど宝くじに当たるようなものです。もっとも「こりゃダメだな」と思ったコピーが大当たりすることもありますからわからないものです。今週も、そんなコピーを眺めていて自分がコピーを書く時の参考になるような視点で、いくつかのアイデアをまとめてみました。 “心に刺さる、つかむ、
心に残るキャッチコピーの創作術(2)” の
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人生でちょっと損した気分になるとき

先日テレビで、「自分が感動的に感じた音楽」みたいなテーマで昔の曲を集めた番組をやっていました。その中に長渕剛さんの「乾杯」があったのですが、リクエストされた方に「どんな場面が思い起こされるんですか?」と尋ねたところ「地方で生まれ育って高校を卒業した時、生まれた土地を離れて東京に出て来た時です」というようなお話をされていました。

とりすは神奈川で生まれて育ったので、地方で生まれ育った人が「私が東京に出る時に仲の良かった友達が、両親が~」のような感動的な物語がありません。だって東京は子供の頃から日帰りするところでしたから。だからそんな話を聞くと、感動的な場面を一つ取りこぼしたような、残念な、ちょっと損したような気分になります。
でも東京に行く時には今でもちょっと緊張します。横浜だとそんなことありません。電車で多摩川を渡る時に「よし、東京だ」とちょっと緊張します。何でだろ~?