有馬温泉

関西の奥座敷、有馬温泉のことは随分前から噂には聞いていた。とても素晴らしい温泉地らしいが残念ながらまだ行ったことはない。
だが有馬温泉の近くに火山はない、ということは知らなかった。箱根や草津、阿蘇などの温泉地は大抵が火山の近くにある。ところが有馬温泉の近くに火山はないのだ。「火山がないのに温泉」と聞くと不思議な感じがする。多くの温泉は地表近くに上がってきたマグマによって地下水が温められて湧出しているからだ。

ところが有馬温泉は地下60kmから温められた水(元は海水)が地殻の隙間を染み上がってきている、らしい。だから有馬温泉のお湯は相当にしょっぱい、らしい。地下60kmにはマントルがあると言われている。マントルとは地球の中心にあると考えられている”コア”を包むようにあるドロドロに溶けた溶岩のようなもの、らしい。ドロドロの状態なので液体のように対流している、のだという。らしいらしいばかりになってしまうが、誰も見たことがない想像の世界なので致し方ない。宇宙の果てなら何万光年も先のことまで調べられるのに、地面の中のことは数十メートル下のこともよく分からないとは奇妙なことだ。

話は逸れるが、距離とは不思議なものだ。例えば最近も日本人宇宙飛行士が乗り組んで話題になっている国際宇宙ステーション。その高度は約400kmだ。400kmといえば東京から大阪くらいの距離である。それくらいのところを国際宇宙ステーションは廻っている。地球から月までの距離は約32万kmだ。一方で地球の直径は12,700kmである。地球の直径の250倍以上の距離に月はある。図鑑などに載っている絵を見ると、月は地球のすぐ側を回っているように描かれているが、地球が直径1センチのビー玉ならそこから2.5m離れたところに3ミリ弱のベアリングが落ちているイメージだ。宇宙は壮大だ。

閑話休題。

地面の下60kmにはドロドロに溶けたマントルがある。そこに向かって地殻表面の”フィリピン海プレート”が動きながら沈み込んでいる。その時に海底近くの海水も巻き込みながら沈んでいく。その水がマントルに温められて地表に湧いて出たのが有馬温泉なのだという。マントルは地球の中心近くでは5,000℃位あるらしい。表面の地殻との境目付近でも数百度から1,000℃もあるのだという。地面を垂直に60km掘ればドロドロのマントルがあるのだと思うとこれまた奇妙な感覚になる。
直径12,700kmのドロドロに溶けた火の玉のまわりを60kmの地殻が覆っている。ドロドロに溶けたマントルのまわりを薄皮のような地殻が覆っているのだ。それはあたかも豆乳の上にできる湯葉のようなものだ。仮に地球の直径が1mだとしたら地殻の皮の厚さはわずか4.7ミリに過ぎない。地殻とはドロドロに溶けたマントルの上に浮かぶ薄皮なのだ。

地表で暮らしている我々には「大地はどっしりと動かないもの」のように見えるが、実際にはかくの如くフワフワと不安定なものだ。どこで地震や天変地異が起こっても不思議のない”地球”というドロドロの火の玉の表面で私たちは生きている。
宇宙も壮大だが地球も負けず劣らず壮大だ。