ウソではない。かといってホントでもない。

先日、ラジオを聴いていたら「マンションポエム」というのが話題になっていた。簡単に言えばマンション売出しのチラシに書いてあるキャッチコピーのことだ。昔からこのテの広告には具体的なことはほとんど書かれていなくて”イメージ”だけで売り込む作戦である。いわく

「人生に南麻布という贈り物。」
( 三井不動産レジデンシャル「パークホームズ南麻布」)

「世田谷、貴人たちの庭。」
(住友不動産「シティハウス用賀砧公園」)

といった具合だ。こういった広告には罪がない。罪はないがおかしすぎてツボにはまってしまうこともある。それは「決してウソではない。しかしホントではもっとない」ところだ。

「そこは、成城でもなく、仙川でもない。
そして、成城でもあり、仙川でもある。」
(セイガステージ仙川)

「どっちなんだ!」という感じだが恐らく成城学園(小田急線)と仙川(京王線)の中間くらいでちょっと仙川寄りの不便なところなんだろうな、と思う。でも「成城学園」というハイソな雰囲気を借りながら「仙川」というお高くとまっているわけでもない、住みやすい街だというイメージが欲しかったのだろう。だが得てしてこのテの物件は成城でも仙川でもない千歳台あたりにあったりするわけだ。それでもマンションを買った人から「成城学園でも仙川でもないじゃないか!」何ていう苦情が来ることはない。
これが昨今人気の吉祥寺や武蔵小杉になるともっとエグくなる。

「吉祥寺に別荘地で過ごすような潤いの日常」
(三井不動産レジデンシャル「パークホームズ吉祥寺北 グランヴィラ」)
「吉祥寺、その先の静域へ。」
(住友不動産「シティテラス吉祥寺南」)

これならどうだ!と言わんばかりの甘い囁きである。もうお察しのことと思うが、この物件は吉祥寺ではない。「その先」の「別荘地」のように離れたところにある。決して嘘は言っていない。そう書いてあるのだから。この微妙なさじ加減はたしかに「ポエム」と呼ぶにふさわしい。何も語らずにイメージだけを強烈に頭のなかに送り込んでくる。しかしこれらの広告で売っているのはマンション(不動産)だ。なのに建物について語っているポエムは殆ど無い。ポエムが語るのはダントツで「街」。そしてマンションポエム研究家の大山顕さんは言う。

街の名前はマンションポエムにとって重要な要素である。
いや、むしろマンションポエムとは街の名前しか言っていないと言ってもいい。「場所ポエム」だ。

なるほどである。建物がある立地について語ることでイメージを固める戦略だ。それぞれの土地に名前には、そこに住んでいない人たちには特有の思い込みがある。「横浜」と聞けば「港町」「ベイフロント」「港の見える丘公園」「大桟橋」「山下公園」などが紐付いてくる。しかし、だ。瀬谷だって二俣川だって横浜だ。でも海なんかないじゃないか。だから言う。「その横浜は、本物か。」(東急不動産「ブランズ横浜」)。大きなお世話だ。街だけではない。その後に続く言葉も「緑」「都心」「豊か」「自然」「歴史」etc。素晴らしい。
そして極めつけはこれだ。

「東京を日常の街にする。」
(ダイワハウス「プレミスト金沢本」)
「富山に東京がやってくる」
(アパホーム株式会社「プレミア 富山駅前」)

東京のマンションではない。そう北陸だ。北陸新幹線の開業で東京は富山に行ってしまうらしい。そして金沢の人は日常を東京の街で過ごすのだ。これは発想の転換である。建物が立っている土地を語ることなく”イメージだけを拝借”してしまっている。
僕は今、猛烈に感動している。