「男はつらいよ お帰り 寅さん」という映画をAmazonビデオで見た。寅さんは既に20年以上前になくなっているから当然出演していない。既にに結婚している甥の満男はサラリーマンをやめて小説家になっており、妻を数年前に亡くして高校生の一人娘と二人暮らしをしている。年老いた両親の博とさくらは団子屋のとら屋を継いでいるが、家の中には手摺りやバリアフリー設備なども設置されている。

「男はつらいよ」シリーズは山田洋次監督が昭和44年から平成9年までに48作を撮影して公開された。映画の前にはテレビドラマとして制作され、最後は寅さんが”ハブ酒で大儲けしよう”と奄美大島に行ったところで逆にハブに噛まれて死んでしまったらしい。それに対しては非難轟々で映画化されたのだという。

先に触れたように主役の渥美清は平成8年に亡くなり、おいちゃんもおばちゃんもタコ社長も御前様も、当時の主な出演者の多くがこの世を去った。

博(前田吟)とさくら(倍賞千恵子)の一人息子だった満男(吉岡秀隆)がかつての恋人だったイズミ(後藤久美子)と小説家となった満男のサイン会で再開し、かつて寅さんとマドンナが繰り広げたロマンスを熟年の満男とイズミが演じることになる。

もちろん寅さんをはじめとした往年のメンバーのシーンはすべて回想シーンになっている。御前様は二代目になっていたが源ちゃん(佐藤蛾次郎)はまだ健在で相変わらずいい味を出していた。他の今でも健在な方々もそれなりに歳を重ねて良い味を出しているが、皆さんそれぞれに齢を重ねて時代の移り変わりを自然な姿で映し出していたが、その立ち振る舞いはかつての面影を残していた。

吉岡秀隆さんといえばかつてテレビドラマ「北の国から」でも中嶋朋子さんとともに30年以上にわたって小学生の子役から大人になるまでの姿をそのままに演じてきた。寅さんや北の国からのように、長期間にわたって多くの同じキャストが演じるには本人以外にもかなりの苦労があるのだろう。俳優といえども人は年老いていつか死んでしまう。

漫画のサザエさんやちびまる子ちゃんのようにいつまでも同じ情景を描き続けることも一つのあり方だと思うが、生身の俳優が次第に年老いて死んでいく姿を描き出すことももう一つの別の描写になっていると思う。

俳優が歳を取るということは見ている方も同じように年老いているということだ。かつての街の姿が時代とともに変わっていくように俳優も人として変わっているのだろう。それでも姿形は老いていても、新しく変わっていく街の中で生き続けてきた古い人間としての姿を演じているところに彼らのプロフェッショナルを感じるのだ。