そんな映画がある。南極観測隊で1年もの間南極にカンヅメになって観測を続ける人たちを描いた映画だ。主人公は昭和基地から1000kmも内陸にある「ドームふじ基地」で越冬する8人の男たちだ。中でも海上保安庁から料理担当として派遣された料理人(堺雅人さん)の目から見た、シャバから隔絶された世界の生活ぶりを描いている。

南極観測隊に料理人というと不似合いな感じもするが、人間は、いや生き物はどこに行っても食べなくては生きていけない。しかもネットもない電話すら1分780円という場所では、食べることは大きな楽しみの一つに違いない。しかし、特に冬の間は建物の外に出ることさえ命がけだという。そんな生活の中ではやはりメンタルをやられる人が出てくる。

南極観測隊に行くような人だからみんな屈強で何事にもヘコタレナイ人ばかりなのだろうと思っていたが、精神的にはいろいろな人がいるらしい。「南極って自由だよなぁ〜。俺なんて2〜3年いたって全然いいんだけどねぇ〜(笑)」という医者がいるかと思えば、「もうダメです。ボクは帰ります」と発狂しそうになる人もいる。「日本に帰って松戸の駅前でパチンコやりてぇ〜!と叫ぶ人がいるかと思えば、衛星電話を取り次いでくれるKDDの交換手の声しか聞いたことのないお姉さんに片想いしてしまう若い隊員もいる。

しかし逆立ちしたって、もう嫌だと言ったって途中で日本に帰ることはできない。帰る手段がないのだ。脱走が不可能な天然の刑務所と同じである。刑期が終わるまでは恩赦も特赦もない。粛々とそこで生きていくしかない。そんな時こそ人それぞれにいろいろな生き方が見えてくるのではないかと思う。

しかし、せっかく与えられた環境なら、そこでしか経験できないことがあるならそこでの生活を楽しめばいいとボクは思う。もちろん南極なんて行ったこともないし越冬隊の生活がどんなものか知る由もないが、お金を使うこともなく食うに困る事もないなら、与えられた仕事以外の時間は自分のやりたいことが思う存分できるのではないかと思う。

今なら電子書籍もあるから読みきれない本を持っていくのもいい。ギター1本くらいなら私物でも持ち込めるというから、1年間ヒマに飽かせて練習したらもしかしたらずいぶんと上達するかもしれない。ノートパソコン を持ち込んで長大なシステムをプログラミングしてみるのもいい。なにしろ時間はたっぷりあるのだ。

日々の生活には不便があるかもしれないが、どうしたってここから出られないのだと腹を括れば好きなことをいくらでもできる自由な時間ができたと思って充実した生活が送れるような気がして、どこかから南極観測隊のオファーが来ないかなぁと楽しみに待っているのである。