皆さんはどれほどの資格を持っているだろうか。身近なところでいえば車や原付の運転免許などがある。中には税理士や弁護士、医師の免許を持っている人もいるだろう。これらの「資格」と言われるものの中には国家資格と民間資格があることはご存知だと思うが、いわゆる民間資格は「免許」ではない。免許とはその資格を持っている人にだけ許された業務がある場合にそう呼ばれる。

ボクが持っている免許は決して多くはない。船や車の運転免許や中学生の頃とったアマチュア無線の「無線従事者免許」くらいがせいぜいだが、車とバイクの免許以外は普段ほとんど役立つことはない。スキューバダイビングのCカード(認定証)も持っているが、あれは免許ではない。潜水指導団体の認定証だ。ただ伊豆半島などでダイビングをするにはCカードというものがとても大切で、これを持っていないと現地でガイドしてもらえなかったり空気ボンベを貸してもらえなかったりする。そういう意味では単なる認定証でも免許と同じような意味がある。

ボクは以前に「中小企業診断士」という資格の受験勉強をしていたことがある。合格率は5%ほどだが資格を持っているからといって弁護士や医師のように専管業務が与えられているわけではない。「私はカメラマンです」とか「私は映画監督です」と名乗るのとさほど違いはない。言ってみれば”食えない資格”というわけだ。

中小企業診断士の試験項目には経済学や財務会計、経営理論の他にも経営法務や情報システム、生産管理、店舗販売管理などがあって幅広い知識が要求される。結局、3年ほど独学で勉強したが全科目の2/3ほどしか合格できずに諦めたことがあった。ただこの時はいろいろな知識を体系的に学ぶことができ、とても勉強になったと思っている。特に経済学ではミクロ経済学やマクロ経済学の概要を知ることができたのがとても良かった。

ただ当然だが、試験勉強をしているだけでは経験は身につかない。危険物取扱主任者などでは受験のための要件として数ヶ月間の職務経験が求められているのとは対照的だ。車の運転免許でさえ実地試験は必須である。もっとも経済学などは過去の人がやってきた経験を元に作られた学問なので、勉強することが過去の経験を学ぶことと似ているし、教科書に書いてある理想論が現実と解離していることも少なくない。これを見ていると「経済の先行きなどまったくわからないなぁ」という境地になる。

子供の頃から資格試験が大好きな人というのは少なくない。そういう人は嬉々として受験勉強をしたがるし決して悪いことだとは思わない。その結果、数十から数百の資格や免許を集めてコレクターのようになっている。ボクの母も生前はマニアのように資格を取ってきては喜んでいたが、実務で役立っていたのはやはり運転免許と薬剤師免許くらいだった。危険物も宅建も使っているところを見たことはない。

本人も言っていたが、結局にところ試験勉強や資格だけでは使い物にならない。日本では大学で医師の免許を取っても一人前の医者になるまでには長い経験が必要になる。それは弁護士にしても同じことだろう。もちろん基礎的な知識や関連する法律の知識はなくてはならないものだが、資格を取っただけではその人生の入り口の扉を開けたに過ぎない。現場では経験が何よりの宝になる。

そうやって数々の経験をしてきたベテランのプロフェッショナルになればなるほど、いかにも謙虚でさらなる勉強を続けている様を見ると、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という諺が心に染みるのだ。