男と女

先日、テレビ番組で「人間の性は男と女の二択ではない」という話をしていた。要するに男と女の間、いやその外側にも連続的なグラデーションがあって女から男へと連続的に変化していくから、その間にはっきりとした境界線はないという話だった。

以前、ここでも福岡伸一さんの「できそこないの男たち」という本の話を書いたことがある。遠い昔、人間の祖先にあたる動物に性はなかった。いやすべて女だったと言ったほうがイメージが掴みやすいかもしれない。女性が単独で個体を増やして繁殖していた。

ミツバチの仲間でも同じような例は見られるという。女王バチが単独で産んだ卵から生まれた幼虫はすべてメスなんだという。そしてメスのハチはすべて働きバチになる。しかしオスと交配して生まれた卵からはオスが生まれるのだという。だから働きバチはすべて女王バチのクローンである。その遺伝子はすべて女王蜂から受け継いだものということだ。

遺伝子の交雑が起こらないということは進化という面から見て多様性に欠ける。それでは都合の悪いことがあってメスからオスが作られた。聖書ではアダムの肋骨からイブが作られたことになっているが、どうやら事実はまったく逆だったらしいことがわかってきた。

遺伝子に交雑をもたらすものとしてはオスとメスの交雑の他にウイルス感染がある。ヒトがウイルスに感染するとウイルスの遺伝子が人の遺伝子の中に取り込まれて、その遺伝子を持った細胞が増殖し始める。運が悪ければウイルスに感染した細胞が爆発的に増殖して死に至る事もある。それはインフルエンザウイルスでもコロナウイルスでも同じ事だ。

しかし運良く生き残った個体にはウイルスから受け継がれた遺伝子が残っていく。それがヒトにとって結果的に有益な進化になることもある。それまでは卵で繁殖していたものが胎盤を通して女性の子宮の中で育てるという哺乳類などに見られる繁殖方法だ。

そんな研究が進んだのはひとえにスーパーコンピューターによるヒトのDNAの全ゲノム解析ができたからだ。仮に電子顕微鏡でヒトのDNAの塩基配列がわかったとしても、その塩基配列の一部がどこかのウイルスの塩基配列と同じだということをコンピュータなしで見つけることはほぼ不可能に近い。

人の全ゲノム解析が終わったのは2003年のことである。それからまだ20年も経っていない。しかしその間にわかってきたことはそれ以前の進化の研究とは次元の違うスピードだ。今まで常識だと思われていたことが根底からひっくり返される事もある。もちろんそれはヒトに限らない。

ボクがあと何年生きるのかはわからないが、100年後、千年後、1万年後にヒトがどのような進化を遂げているのかを見ることはできない。それでもこれから十年ほどの間にも多くのことがわかってくるのかもしれないと思うと無性にワクワクしてしまうのだ。

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