モータースポーツの一つにラリーという競技がある。モータースポーツといえばレースのF1が有名だ。レースはサーキットを使って「よーいドン!」で全員が同時にスタートするが、ラリーでは主に一般道で1分おきなどの間隔で1台ずつスタートする。スタートした時間とゴールした時間の差でそのスピードや正確さを競うことになる。

あまり知られていないがラリーでいう「正確さ」とは、「ここから次のCP(チェックポイント:時間計測所)までを時速36キロで走りなさい」という指示通りに走るということだ。次のCPに着くとまた「次のCPまでは時速54キロで走りなさい」という指示を受ける。指示された速度とのズレ(CP間の距離はわかるので所要時間を測ればズレがわかる)が少ないほど上位になる。

かつて映画「栄光への5000キロ」で石原裕次郎がアフリカのサファリラリーを猛スピードで走っているシーンがあったし、一時話題になったパリ・ダカ(パリーダカールラリー)でも三菱パジェロが砂漠を疾走していたので、ラリーも「速いヤツが勝ち」と思われることが多い。

もちろんそういう区間もあるが、日本の普通に信号や一時停止のある道で「平均時速45キロで走りなさい」と言われたら、時には100km/hを超えるスピードで(一般道ではスピード違反です)走らなければ時間通りに着くことはできない。

アフリカの未舗装のサバンナで「平均時速150km/hで走れ」と言われたら最初から最後までアクセル全開で走っても間に合わない。だから「速い人が勝ち」と思われるのだ。未舗装の道で、時にはぬかるみもある道は東名高速道路とは違う。突発的なアクシデントに備えてとにかく時間を稼がなくてはならない。

昔は助手席に乗るナビゲーター(ナビ)がストップウオッチと距離計と計算尺で常に計算しながらドライバーに、「7秒遅れ、もっと早く!」だの「2秒先行、そのままのペースで」と指示を出していた。クローズドされた林道を全速で走るときには「右、緩いカーブ、3速全開!」と指示することもある。

先の見えないカーブでも前もって下見して作ったノートをナビが読み上げるので、ドライバーはその言葉だけを信じてアクセル全開でカーブに飛び込む。林道は競技の主催者によって閉鎖されているので対向車が来る心配はない。

ボクがラリーに夢中になっていた頃には距離計と時計と計算機が合体したラリーコンピューター(ラリコン)というのが出回っていて、CPに着いて「次の区間は時速34キロ」と指示されたらコンピュータに「34キロ」と入力すれば自動的に遅れや先行時間が表示されるようになっていた。

しかし大揺れする車の助手席で距離計とストップウオッチと電卓だけを見ながら計算に没頭していると、10秒くらいで激しい車酔いを起こす。ラリコンができるまではナビゲーターは辛い役割だった。だから車に弱いボクはドライバーしかやらなかった。