先日、「私、メカは苦手で…」と大声で話す中高年女性に出会った。「メカ…」、なんとも昭和な響きである。メカニズム、メカトロニクス、その辺りの言葉を略して「メカ」というのだろうか? 今時そんな言葉を使う人がいるとはにわかには信じられないがその人は確かに「メカはダメなんです」と言った。

その人にとってメカとは何を指すのかわからないがスイッチやボタンがついていて自分が今まで触ったことのないものをメカと言っているようだ。でもその人もテレビや電子レンジ、スマホやDVDプレーヤーは普通に操作しているらしい。メカとメカ以外のもののボーダーラインがよくわからない。

まだ中学生だった頃、オーディオコンポが流行った時期があった。アンプやチューナー、レコードプレーヤーやカセットデッキがそれぞれ別々になっていて、裏側の配線をうまいこと接続する必要があった。ボクは小学生の頃から学校の放送委員をやっていたのでそのテのことは割と得意だった。

クラスで休み時間に同級生の可愛い女の子がボクのところにやってきて、「うちでステレオを買ったんだけど家族は誰も配線ができなくて…今度の日曜日にうちに来て配線を教えてくれる?」と言われた。

これはチャンスである、大チャンスである。クラスの女の子の家に上がって配線ができるのだ。たかがコンポの配線くらいでお近づきになれるチャンスなどあるものではない。ボクは二つ返事で引き受けた。その後、今まで口を聞くこともなかったその女の子とも普通にお話ができるようになった。いい時代だった。

ボクにとっては日常茶飯事のことだったので彼女の前で苦労することもなく男をあげることができたのだが、その後色々な友達のお母さんから頼まれて電化製品の配線を繋いだり部屋の模様替えの時にはよく借り出された。その時必ず言われたのが「うちは一家でメカに弱くて…」だった。

この時に決心した。「メカに強くなって女の子にモテるようになろう!」とにかくスケべェなことしか考えられない思春期の男の考えることは単純なのである。