伊藤若冲、江戸時代中期の画家である。40歳を過ぎてから絵を描き始めたが自分の描くべき題材にしっくりと来ず初期の頃には様々なものを描き散らしていたと言われる。絵の模写から始まりやがては実態写生の道へと歩き出す。

当時は写真などなかったから美しい色彩と精緻な描写は若冲の大きな特徴である。若冲の名は尊敬していた禅僧・売茶翁から授かったといわれている。

若冲は若い頃から身の周りにあるさりげないものをスケッチするのが好きだったという。しかし隠居後、模写をする中で狩野派の画風に影響を受けたらしい。しかしやがて、これが本当に自分の描きたいものだろうかと思うようになり様々なものから雑多な影響を受ける中で「自分が描くべきなのはやっぱり生き物や草木なのだというところに行き着いたらしい。

それにしても僕が不思議に思うのは「自分が本当に求めているものを探し出すこと」である。仮に「これだ!」と思うものに無意識下で出会ったとしてもそれが自分の求めているものだと直感的にわかるものなのだろうか。

数多のものが目の前を通り過ぎる中で「これだ!」と思うものを瞬間的に選び出すことができるものなのだろうか。ボクにはまったく自信がない。それともあとになって熟考した結果、「やっぱりこれのような気がする」と緩やかに決まるものなのだろうか。

若冲は絵画に人生を没入させた後も様々な経験をする中で次第に「たぶんこれだ」と思えるものを見出していったような気がする。もちろん天才画家の考えることと自分を比較しても仕方ないが、そう考えたほうが凡人のボクにもささやかな救いが見出せるような気がするのである。