ちょっとずつ入ってくるものをくまなくチェックして悪いものをフィルタリングすることを水際対策という。麻薬や覚醒剤の密輸を空港や港湾でチェックして摘発するのも水際対策の一つだ。今年は春先から新型コロナウイルス(Covid-19)の世界的な感染拡大から日本でも空港などで水際対策と称して様々な対策が取られた。

「入鉄砲と出女」ではないが、都合の悪いものが侵入してくるのがある程度限られた量で一時的な場合には有効な対策になる。入ってくるものを根絶やしにし続ければその内側を潔白な状態に保つことができる。日本でも最初の頃は水際対策の効果が出ていた。もっともこのウイルスがモンゴロイド人種の間で重症化することが少ないという事実がどれくらい影響していたのかはわからない。

しかし異物がチョロチョロと入ってこようとするのではなくドバドバとダムが決壊したかのように流れ込んでくるようになったら水際対策ではとても防ぎきれない。莫大な量の濁流が鉄砲水のように押し寄せてくるものを限られた人間が人力で押さえ込むことなどできない。しかも流れ込んでくる水がいつ終わるともしれない時にはもはや意味がなくなる。水際対策は一時凌ぎの時間稼ぎだ。その間に自体が収束してくれることが大前提だ。

今の日本は第三波にあると言われている。緊急事態宣言が出された春先や8月の夏休み頃の流行を遥かに上回る感染を見せている。こうなってしまってはもはや水際対策だけではどうにもならない。内側で感染が蔓延し始めてしまったのだ。もちろんさらに新しい脅威に関して水際対策をとることはとても重要なことだと思う。ところが政府はまたも水際対策を疎かにしている。

内部に蔓延してしまった異物を取り除くには新しい特効薬の開発も重要だが病気は一定期間を過ぎればある程度の確率で治癒する。つまり感染をある程度押さえれば自然に回復する。新たに感染する人の数より回復する人の数が多ければ感染者数は少しずつ減るはずだ。政府は「累計感染者数」や「新規感染者数」ばかりを強調するが一番の問題は現在の罹患者数だ。

海外ではいくつかのワクチンが開発に成功したといわれ接種が始まっている国もあるが、このワクチンは感染を抑えるものではなく感染した後の重症化を抑えるものだといわれている。薬のことはわからないのでこれらのワクチンがどれほどの効果をもたらすのかはわからないが、少なくともかつてのペニシリンのような劇的な結果がもたらされるとは考えにくい。

今の私たちにできることは少しでも感染を抑えるために人の移動や接触を減らして我慢することだけではないだろうか。クリスマスも街には数多くに人が繰り出した。年末年始のお正月休みにはさらに多くの人が出かけることは想像に難くない。感染が拡大すればするほど社会的な回復にも時間がかかる。そうなればさらに長い間私たちの暮らしは長期間にわたって苦しみ続けることになる。