関西弁では「粋(イキ)がってる」ことを「イキってる」というらしいがボクはたぶん今まで聞いたことがない。関東弁(?)でいうところの「カッコつけてる」にあたる言葉なのだろうか。でも関東でも「粋がってる」は普通に使う言葉だが略して「イキってる」ということはない。

略語というとボクはすぐに「マクドナルド」の略し方でシティーボーイとイナカモノを見極めようとするクセがある。横須賀に住んでいた中高生の頃、横浜からやって来た転校生は決まって「マック」と言っていたがイナカモノのボクたちは「マクド」と呼んでいた。

大人になってから勤めていた会社の大阪支社に出張した際に、大阪育ちの同僚たちがこぞって「マクド」と呼んでいるのを聞いて、「大阪は横須賀なみにイナカなんだなぁ」と思って嬉しくなったことを覚えている。

とある辞書を編纂する人の姿を描いた三浦しおんさんの「舟を編む」という小説が有名になって、辞書を作る人に注目が集まった。その人たちが集まって選ぶ「新語大賞」というものがある。今年の新語大賞は「ぴえん」という言葉なんだそうだ。ボクはこれをみた時、「『ぴえん』って?」と思ってしまった。初めて聞く言葉だった。見当もつかないし意味なんてまったくわからない。

そこでネットを検索するとすぐに出てきた。例文として「電車に間に合わない、ぴえん」などのように使うらしい。小声で泣きまねをするときの言葉や困ったり思い通りにならなくてちょっと悲しい気分を表す言葉だという語訳がついていた。この言葉について「今後の辞書に載ってもおかしくない言葉」なんだそうだが、ボクにとってはまったく初めて聞く言葉で面食らってしまった。ボクらの時代のマンガに載っていた「ビエ〜ン!」みたいなものだろうか。

ボクは最近の若い人たちと交流することもほとんどないから無理もないと思うが、若い子たちがSNSなどでどんな話をしているのかなど想像もつかない。しかしそれにしても”ぴえん”が大賞になるほどの言葉とはなんともしっくりこない。

アイドル歌手などもそうだが、昭和の頃には「国民的歌手」と言われる人がいた。山口百恵や森昌子、郁恵ちゃんや山本リンダなど、子供から年寄りまで誰もが知っていた。言ってみれば”常識”だった。メディアや価値観の多様化でアイドル歌手を含めてほとんどの国民が知っていることが少なくなった。これはもう常識が通用しなくなった社会だ。共通語がなくなった。

「ぴえん」も若者たちの間では常識なのかもしれないが中高年にとっては、少なくともボクにとっては常識でもなんでもない。それでも言葉を扱う仕事をしている以上、世の中で使われている言葉にはもっと敏感にならなくてはと思うのだが、メディアを含めてボクが普段接することのできる世界にはまったく存在しない言葉をどう扱っていけばいいものか、ちょっと途方に暮れている。