「デフォルト」という言葉を使うときには「標準的」という意味で使うことが多い。「最近の乗用車はハイブリッドがデフォルトでしょ」とか「会議はリモートをデフォルトにしましょう」などと言う。ボクがシステム業界に入った頃にはすでに使われていたような気もするが、それ以前のホストコンピュータ全盛の時代にはあまり使われていなかったと思う。

ホスト(汎用)コンピュータには今のパソコンのようにWindowsやMacのようなOS(基本ソフト)というものがなく、それぞれのメーカーや製品ごとに異なるOSが搭載されていた。テレビや洗濯機、電子レンジの操作が機種ごとに異なっているように使っているコンピュータごとに操作方法が違っていた。そのために何十冊ものマニュアルと首っ引きでプログラミングなどをしていた。

”標準”がないということは初期設定も動作の仕方にもルールがあるわけではないのでそもそも「デフォルト」というものがなかった。ボクがしばらくの間ホテル業界でうつつを抜かしている間に猛烈な勢いでWindowsが世の中に広がり始め、Windows95とともにシステム業界に戻った。

すでに汎用コンピュータは時代遅れになりどこのオフィスもPC/AT互換機(DOS/V機)があふれていた。そのOSはほとんどがWindowsだったので操作方法も初期設定もかなりの部分が標準化されていた。すると決まりきった初期設定を毎回説明するのも時間の無駄になり「それはデフォルトでいいから」などと言い始めたわけだ。そして我々の生活の中では「初期設定」という意味で使われることの方が多い。

しかしデフォルトとはもともと英語の”default”で「債務不履行」や「欠席」という意味だ。コンピュータの業界で使われている「初期設定」や「標準的な動作」という意味はなかった。おそらく初期設定のままで操作を”省略する”という意味から「デフォルト」という言葉が使われるようになったのではないかと想像しているが本当のところはわからない。

スマホが爆発的に普及してコンピュータも身近なものになった。今のスマホもAndroidやiOSに設定されている膨大な初期設定を全部理解することなどできないからほとんどの機能を”デフォルト”のまま使っていることが多い。しかしひょんなきっかけでそれらの初期設定を見直してみると、とんでもないところにスマホメーカーや通信会社、アプリメーカーの罠が仕掛けられていることもある。

何も理解しないまま「とりあえずデフォルトでいいよね」などと自分を守る権利を放棄するようなことにならないように気をつけようと思う今日この頃だ。