ヤンセンニシキベラという名前の魚がいる。日本でも割と南の沖縄や小笠原諸島に生息している10数センチのベラの仲間だ。10数センチというと一般には”小魚”という感じだが、ダイバーにしてみると水中では割と大きめの魚である。もちろんマンタやジンベイザメなどと比べれば確かに小さいが、普段潜っている時にそのような巨大な魚に遭うことはまずない。種類にもよるが、多くのダイバーにとってサメなどは憧れの的である。

ヤンセンニシキベラは南の海では珍しい魚ではない。彼らが適した生息環境に行けば割と普通に見られる。だから潜っている時にも普通に目にする。目にすると「ヤンセンニシキベラだ」と一人で思う。年に数回しか潜らなくなった今では、1年も経つと魚の名前も忘れてしまう。だから海の中では魚の名前を思い出すように見たものの名前を独り言のように繰り返す。今、どれくらいの種類の名前を記憶しているのかはわからないが、その数は年々少なくなっていることは間違いない。

話は変わって、「ヤンセン」と聞いてあなたは何を思うだろうか? ボクはなんとなく北欧系の人の名前のように感じる。かつてスキージャンプで絶対王者で”鳥人”とも言われたフィンランド人はニッカネンだった。モータースポーツの世界ではフィンランド人が大活躍しているがF1で活躍したミカ・ハッキネン、WRC(世界ラリー選手権)ではサロネン、バタネン、カンクネン、ハンヌ・ミッコラなどは世界王者として一斉を風靡した。ちょっと毛色は違うがアンデルセンもデンマーク人だ。

フィンランド、スエーデン、デンマークはスカンジナビア半島にある北欧3国で、歴史的には帝政ロシアやソ連から迫害されてきた歴史があるが、スキーのノルディック競技や先に紹介したモータースポーツの世界では世界的な選手を輩出し、彼らを讃える「フライイング・フィン(空飛ぶフィンランド人)」という呼び名はフィンランドに限らず、北欧のアスリートを賞賛する言葉として有名だ。

以前勤めていた職場ではデンマークのIT企業と一緒に仕事をしていた。デンマークの本社やロンドンの支社から何人かのデンマーク人がやってきて打ち合わせをすることもあったが、彼らの名前はほとんどが”トイボネンネン”、”カールソン”というような名前だった。日本でいうと「〇〇男」「△△介」のような名前なのだろう。

”ヤンセン”という北欧人をボクは知らないが、”〜ネン”や”〜ソン”という名前を聞くとなんとなく北欧風なイメージを持ってしまう。

南の島の海の中で”ヤンセン”という名前のついた魚を見ると「こんな温かい海なのにどうして北欧なんだろう?」とバカなことを考えてしまうのだ。