ボクは趣味でスキューバダイビングをする。最近では趣味というほど潜ってもいないが、それでも年に一度は南の海に潜りに行っている。もう20年ほども前からお世話になっている現地のガイドさんに海の中を案内してもらっている。時々は他のお客さんと一緒に潜ることもあるが、ボクらが行くのはたいてい閑散期なので他のお客さんと会うこともあまりない。

たまに一緒に潜るお客さんがブリーフィング(潜る前に注意点や見所などをレクチャーされること)の時、ガイドさんに「ここは地形ポイントですか?」と訊くことがある。このガイドさんは特にこだわりもないので(と思う)「うーん、チ・ケ・イ…です」などと答えていたが、そんなことはどうでも良さそうな顔をしている。

「地形ポイント」とは一般に、大きな岩があったりドロップオフ(急激な断崖)があったりする水中景観が楽しめるダイナミックなダイビングポイントを指す。確かにその時に潜ったポイントは”地形ポイント”と呼ぶに相応しいダイナミックなところだった。しかしそのガイドさんは潜行するなり海藻に着いた1センチほどのエビを指してガイドし始めた。

地形ポイントに行ったらダイナミックな景色”だけ”を見せればいいと思っているガイドは多い。たとえそこの岩陰でクマノミが産卵行動をしていたりそのポイントにしかいない小さな魚がいても、「水中景観とウミガメさえ見せていれば客は満足する」と思っている人も多い。しかしよく見ればそこにも他のポイントと同じように面白く不思議な水中生物たちの営みがある。

しかし地形ポイントだと決めつけている人にそんな小さなものは目に入らない。せっかくそこに別の面白さがあっても、自分が決めつけて分類した以外のものは見えなくなってしまう。

自動車やバイクを見るときも同じだ。セダン、ワゴン、トラック、ライトバンといった種別にこだわり過ぎると他の使い方を考えなくなる。新聞配達の「カブ」でツーリングに行こうとは思わなくなる。日本では新聞配達や出前のバイクのイメージが強いが、ホンダがアメリカでカブを発売した当初は「フィッシング・カブ」という名前で、休日に釣りに行く時に使って欲しいと思って開発されたバイクだった。アメリカではそれで爆発的な人気が出た。日本のカブはそれを逆輸入したものだ。

人は何かを見るとどうして決めつけてカテゴライズしたがるのだろう。一度分類してしまえばそれ以外の発想はしにくくなる。一つに決めつけたらそれ以上のイメージが広がらなくなる。それは人生の半分を無駄にしているようなもので、なんともモッタイナイ。