公約とは約束だ。約束は守らなくてはいけない。けれど約束してもすべてが思い通りになるわけではない。例えば気象庁が「明日、雨は降りません」と約束しても天気のことなど神サマしかわからない。気象庁が天気を決めているわけではない。アメリカのトランプ大統領は11月の大統領選に向けて新型コロナウイルスを年内に完成させると公約に掲げた。でも彼はワクチンの研究者でも製薬会社でもない。ただの不動産屋だ。

開発するのも製造するのも自分ではない。なのになぜ「年内に完成させる」と約束できるのだろうか。誰かに「作れ!」と命令するだけであとは自分の力の及ばないところにある。そもそも彼は大統領になってから様々な約束を反故にしてきた。だからもう一つくらいウソをついたって構わないと思っているのだろう。そのウソで大統領に再選されるのなら安いものだ。それをアメリカ国民がどう思っているのかは知らない。

以前勤めていた職場では半年ごとに目標設定と自己評価というものをやっていた。今後半年間で自分が達成する目標を作って上司の前で達成を誓うのだ。そして前期に立てた目標が達成できたかどうかを自己評価する。自己評価だから自分が達成したと思えば達成なのかと思えば、上司はそれを見て「達成できてないじゃないか」と文句を言う。それなら自己評価などさせないで上司が評価しているのとなんら変わらない。

そんなある日、「目標設定と自己評価のやり方」という社内セミナーが開かれた。社外から呼ばれた講師は無責任にも「自分の力ではどうにもならないことは目標に書くべきではない」と言い放った。売上目標を立てたってお客が買ってくれなかったら売れないでしょ、だからそんなものを目標にしてはダメなんです、と。

セミナーではそう言われたが、目標設定の面接では売上目標や利益目標を書かないと上司は首を縦には振らなかった。セミナーでは違うことを言われましたと言っても聞かない。上司はオレだからオレがダメだと言ったらダメだ、と譲らない。だったらそんなセミナーを受けさせるなよと思った。朝令暮改なら時系列だから理解できるが同時に「走りながら止まれ」と命令するのは頭がおかしい。

じゃあ何を目標にすればいいのかと訊いたら「受注件数と売上が最優先だ」と言う。これまた変な話だ。最優先は一つにしてもらわなければ困る。そう意見したらしばらくして多部署にトバされた。報復人事だと思ったがどこの部署に行ったところで状況は変わらないので黙ってトバされた。倍返しもしなかった。つまらない職場だと思った。ほどなくして退職した。