星野リゾートの社長がテレビ番組に出ていた。今回の新型コロナ騒ぎで5〜6月の売り上げは9割減だったそうだ。それは政府も医療関係者も大臣もそこらにいる普通の人まで「出かけるな」と言っていたのだからそれはそうだろう。こんな最中に旅行なんてしようものなら非国民のレッテルを貼られてしまう。

感染拡大を抑えるにはとにかく誰とも会わないことが肝心なのは間違いなさそうだが、かと言って誰にも会わずにスーパーで買い物をするのも無理だし通勤電車に乗って出勤することもできない。ただいわゆる不要不急だと思われている”遊び”くらいは我慢しなさいよというところだろう。もっとも最近では政府まで「遊びに行け!」と言い出したので我ら愚民どもはどうしたらいいものだか考えあぐねている。

旅館やホテルをはじめとした観光関連産業の年間売上額は230兆円とも言われている。海外からの旅行者はほぼなくなり国内旅行者も出かけなくなったのだから旅行業のダメージは計り知れない。しかし今、表立って「おいでやす山口へ」みたいなキャンペーンをすることもはばかられる。売上は下がっても販促は反則だと言われてしまっては手も足も出ない。

星野社長は4月の時点で、「旅行文化がすぐに元に戻ることはない」と話していた。まずは感染が収まってくる時期があったとしても多くに人はいきなり海外旅行などで遠くに行くことは避けるだろうと言っていた。でも全く出かけない生活が続けられるわけがない。そこで提案していたのが「マイクロツーリズム」だ。まずは県内や隣県などの近場の観光地に行くところから始まるだろうという。根拠はないが誰しもその方が家のそばにいて”安心”だと考える。

星野リゾートが運営する八ヶ岳のホテルでは以前からファミリー層に人気があった。中でも朝食ブッフェが人気だったというが5〜6月はホテルの営業はしていたものの新型コロナ対策で朝食ブッフェは中止していた。それでもわずかに訪れるお客さんからも「こんな時だから仕方ありませんが、朝食ブッフェがなくて残念でした」というお客様の声が多かったという。お客さんの残念がる声を聞いて「どうしたら満足してもらえるか」をスタッフ全員で考えた。

「料理と料理の間に衝立てをする」「子供には席に着いたらすぐにセットメニューを配膳する」「料理を取りに行く時にはお客にビニール手袋を着用してもらう」などの対策をして7月からは朝食ブッフェを復活したのだという。子供は料理が来るのを待てないし子供が料理を取りに行くと親も一緒について行くので密になる。だからブッフェにこだわりの少ない子供には席に着いたらすぐにセットメニューを配膳する。すると子供は食べるのに夢中になるからその後で親は交代で子供の面倒を見ながら手袋をして自分の料理を取りに行く。もちろん不自由だがBestではないがMore Betterなやり方だ。

「コロナだからできない」ではなく「どうしたらできるか」を考えることが大切だ。お客に少しでも楽しんでもらうために「何ができるか」をみんなで考える。そのために星野リゾートでは「星野リゾートの倒産確率」というのを計算して全スタッフに共有したという。その確率は30%を超えて40%近くにもなったという。普通の会社なら役員の間だけに流されるような情報をすべてのスタッフに公開した。その上で「自分は何ができるか」を考えさせた。

不都合なことはなんでも隠せばいいというのは間違えだ。不都合なことも弱みも強みも全てをあからさまにした上で何ができるかをみんなで考えていく。黙ってトップだけが逃げていくような組織は誰からも信用されない。東洋のどこかにある島国のリーダーたちに聞かせてやりたいようなセリフである。