先日テレビで、お笑い芸人がハンバーガーチェーンの社員にマーケティングの講義をするという番組をやっていた。バーガーキングというチェーンだ。実は30年ほど前にバーガーキングが初めて日本に出店した時、当時ボクの勤めていた会社の関連会社と提携していたので勤め先の会社のビルの1階にもバーガー・キングが出店した。だから当時からバーガーキングのことはよく知っていたのだがその後、日本でのビジネスがうまくいかずに撤退してしまったので疎遠になっていた。

お笑い芸人はセミナーの頭で社員たちに居並ぶ社員たち(リモートだが)に「あなたの必殺技はなんですか?」と質問している。「ウェスタンラリアートです」と答えた若手社員もいたが「バカ、会社のだよ!」ツッコミを入れられている。それに対して社員たちは揃って「ワッパーです!」と答えている。

ワッパーはバーガーキングのメニューの中でも一番巨大なハンバーガーでバーガーキングの看板メニューである。最初に店を訪れた時にボクも一度だけ注文したことがある。その大きさに当時20代だったボクでも食べきるのがやっとで、次からは「ワッパーJr.(ジュニア)」をいう小さめのものを注文するようになった。続けて質問が飛ぶ。「じゃあ日本国民の間で何割くらいの人がワッパーを知っていると思いますか?」それに対して社員の一人が「5割くらいじゃないですか」などと答えている。

バーガーキングというハンバーガーチェーンの名前を一度でも聞いたことがある、という人ならいざ知らずその中の商品の名前まで知っている人など100人に一人もいないだろう。おそらくは1%未満だ。自分の会社の主力商品だから社員がよく知っているのは当たり前だが関係のない人の認知度など限りなくゼロに等しい。

芸人は叫ぶ。「甘い甘い、甘すぎる!」「認識が甘い!」「ワッパーなんて知っている人など誰もいないと思いなさい」と言う。まさにその通りだ。ボクだって西武商事に関わっていて仕事でバーガーキングを知っていたからわかるだけだ。テレビCMすら打っていないのに全国の人が知っているはずがない。マクドナルドのビッグマックとは訳が違うのだ。「あなたは相手がいないところで一人で必殺技をかけようとしているんです」。うまい言い方だと思った。

人には自分の知らないものが見えない。その存在自体を認識していないからだ。畳み掛けるように芸人は言う。「何も知らない人に話しかけるつもりで商品の良さを語りなさい」。「ワッパーはとにかく大きくて美味しいんです」と言ったところで聞いている通りがかりのお客は「ワッパーって何?」と思うのが関の山だ。

「私たちはバーガーキングというハンバーガーチェーンです」
「私たちの主力商品にワッパーという大きなハンバーガーがあるんですが、  これが大きい上にめちゃくちゃ美味いんです」
「プレゼントしますからぜひ一度食べてみてください」

くらいでちょうどいいのだ。タダでくれるというなら飢えた高校生なら喜んで食べてくれるだろう。

市役所で道を尋ねた。「税務署はどこですか?」係の人は「玄関を出て右に進むとゴウチョウが見えますのでその先です」と答える。

「ゴウチョウ?何ですかそれ?」
「合同庁舎です」
「…」

「…」はモノが言えないくらい呆れているということだ。そんな公務員しか使わないような言葉が一般市民に伝わると思っているのだろうか。市役所にはそんな職員ばかりだ。公務員はすべからくこんな対応だ。非常識にもほどがある。公務員の採用試験にはもっと一般の”ジョーシキ”を問うべきではないだろうか。

先に出ていた芸人とは東北・仙台出身のサンドイッチマンである。バーガーキングは東北6県には1つも出店していない。なぜ番組のプロデューサーはバーガーキングの話題をサンドイッチマンに振ったのかわかるだろうか?