人前で話をしているとき、コロナ騒ぎの影響もあって最近ではお客さんがマスクをしていることが多い。というかほとんどがマスクをしている。聴衆がマスクをしていると表情がほとんどわからないから自分の話がどのように受け止められているのかほとんどわからない。これは人前でプレゼンテーションなどをしたことのある人なら誰でもわかると思う。話をしている相手の反応がわからない中で話題を紡ぐのはかなり神経を使う仕事だ。

とりわけ自分の話がウケているのかどうかが全くわからない。話を理解したり賛同して納得しているときは頷いたりするので多少はわかるものの、笑ったり笑顔になっている様子はその人が声に出さない限りわからない。別に落語家やお笑い芸人ではないのだから無理して笑ってもらう必要もないのだが、笑いや笑顔はコミュニケーションの潤滑油だと思っている。

話をしながら次の話の展開を考えるときには、今の話がどのように受け取られたかを見極めながら次の展開を考える。多くの人はここで「えー」とか「あのー」などの声を出して考える時間を稼ごうとするが、以前にも書いたがえー、あーという無駄な声を入れてしまうとただでさえわかりにくい話がズタズタに切れてしまいもっとわからなくなる。だから特に人前で話すときには「あー」「えー」「あの〜」を声に出さないように努力すべきだ。

では話が詰まってしまいそうなときにはどうするのか? 声を出さないで黙っていればいい。それを「話の間」と捉えてくれる人もいるし自分も考える時間が稼げる。場を持たせようとして不要な声を出すくらいなら黙っていればいい。話が逸れてた。

話している相手の反応がわからないとそのあとの話の展開に悩んでしまう。笑ってくれたり「そうかな?」と疑問を持っているようならもっと興味のありそうな話に繋げてみたり、わからないところを聞き出してもっとわかりやすいように説明することだってできる。でも面白いんだかつまらないんだか、わかったんだかわからないんだかが表情から読み取れないとこの先どうしたものだか困ってしまう。今の相手の状態がわからないとドツボにはまってしまうこともある。こんな状況なので致し方ないのだが、なんとかマスク越しに相手の表情や感情を読み取ることができないかと試行錯誤する毎日だ。

先日、話を聞いている人に「ここまでは大丈夫ですか?」「そろそろ眠くなってきましたね?」などと話しかけるとなんらかの反応が返ってくることがわかった。こちらから一方的に話しているときにはわからなかったことが、相手に質問することで積極的な反応を引き出すこともできるらしい。おそらく聞いている人もなんらかの形で自分の感情を相手に伝えたいと思っているのだろう。

マスクをしていることで自分の表情が相手に伝わりにくいことはわかっているから、質問されれば声に出して答えたいと思うのだと思う。コロナ騒ぎになる前、人は喜びや悲しみ、怒りや幸せを表情に出すことで意思の疎通を図ってきた。それが難しくなってしまった今、なんとか他の方法を使って自分の気持ちを相手に伝えることに腐心しているに違いない。

今のマスク生活がいつまで続くのかは誰にもわからない。マスクに代わる他の予防手段が出てくるのかもしれない。でも今の生活様式が続く限りは人も様々な手を使ってコミュニケーションをしようとするはずだ。オンラインもいいがそれだけではない人との繋がりを保つための新しい方法がたくさん見つかるといいなと思っている。