まだ昭和の真っ只中、ボクが高校生の頃に「北の国から」というテレビドラマが放送されていた。今では温泉といえば♪ババンババンバンバン♪と並んでそのテーマ曲は北海道を表すアイコンになっている。ドラマの放送中もそれなりに話題にはなったが20年以上も続編が作られるほどの長寿ドラマになるとは思っていなかった。

当時小学生だった子役はすっかり大人のオジサンとオバサンになったが、ドラマを通じてその成長を見られたというのはインパクトが大きかった。もちろん彼らのプライベートを見ているわけではないが、中学生になり高校生になり役者として活躍する姿が自分の子供や孫の姿と重なる人もいたのではないだろうか。

昭和55年、このドラマが放送されていた頃はみんなタバコを吸っていた。ドラマの中では男も女もみんなタバコを吸っていた。父親役の田中邦衛さんや岩城滉一さん、いしだあゆみさんやまだクイズダービーに出ていたであろう竹下景子さんも吸っていた。当時はタバコを吸うことがカッコよかった。カッコいいと思われていた時代だった。

タバコにはなんとなくオトナの香りがする。若者がところかまわずスパスパ吸っていると軽薄なだけだが、成熟した大人が物憂げにタバコを吸っている姿に憧れた時期もあった。ボク自身も、いつからとは言わないがタバコを吸っていた。自分がタバコを吸っている姿を決してカッコいいとは思わなかったがいつの間にか習慣になっていた。

そして時代は変わった。当時からアメリカあたりではタバコと肥満は意思が弱くだらしない人間の象徴として軽蔑され始めていた。肥満でタバコを吸っている人は決して出世できないと言われていた。しかし日本ではまだまだ大人の象徴としてタバコは一般に認知されていた。

いつの頃からだろうか。タバコに対する受け止めはすっかり変わってしまった。”カッコいい”から”野蛮”になってしまった。それはたばこの健康被害を訴えるキャンペーンが功を奏したわけではない。タバコがカッコ悪い、イケてない象徴になったからだ。飲みに行っても親しかった友人に「オマエ、まだタバコなんか吸ってんのかよ」とバカにしたように言われるようになった。タバコを吸っているだけであたかも格下の人間のように扱われるようになった。

人の習慣を変えるのは”健康被害”などではない。”人に迷惑をかけるから”でもない。「カッコ悪い」と言われるからだ。”劣った人間”だと思われるからだ。人は常に他人より優れた人間でありたいと思っている。だから自分の自慢話をして争いに勝とうとする。人間も他の動物にも当てはまる普遍の習性だ。この基本的な動物の習性が多くの人にタバコをやめさせた。

まだタバコをやめられないでいる人も自分のカッコ悪い姿をみんなに見られたくないはずだ。そんな人は「体に悪いから」と言っても決してたばこはやめない。そんなことは本人も十分にわかっている。だが「タバコはカッコ悪い」ということがまだわかっていないからやめようと思わない。だが自分はカッコ悪いと思っていなくても周りの人はあなたのことを相当にカッコ悪いと思っている。

それでもあなたはまだタバコを吸おうと思うだろうか?