副作用

自分が得をするのは嬉しい。さらに自分だけが得をするのなら嬉しさもひとしおだ。他の誰もいい思いをできないのに自分だけがいい思いをするのなら余計に優越感を感じる、なんてことはないだろうか。自分が他の人より人一倍努力して勝ち取ったものなら当然のことだと思っても、何も努力をしないで棚ボタ的に手に入れたものなら”得した感”も倍増する。

人は労せずして手に入れるのが大好きだ。サプリを飲むだけで健康な体を手に入れ、薬を飲むだけでスレンダーなボディーを手に入れられるならそれに越したことはないと思う。だが本当にそうだろうか。人魚姫は人間の”脚”を手に入れるために声を引き換えにしたし、悪魔は”魂”と引き換えに願いを叶えてくれる。交換条件である。

ガンを治したり進行を遅らせるために抗がん剤を使ったり放射線治療をする。そのかわりに髪の毛が抜けたりひどい吐き気に襲われたりする。副作用だ。ガンに限らず病気を治そうとして薬を飲めば多かれ少なかれ副作用がある。「薬にも毒にもならない」とよく言われる。つまり多少は体に悪いものでなくては薬としての価値のないものが多いということだ。ほとんどの薬は病気に対して何らかの攻撃はするが自分の体も痛めつけてしまう。いいことずくめのものなどない。

就職活動でコネクション(コネ)を使う人がいる。それがルールに反していなければ使っていけない理由はない。コネがあれば就職試験や面接で有利になるかもしれない。入社してからも他の人より出世が早く給料もたくさんもらえるかもしれない。しかし基本的にコネは自分の力ではない。親なり親戚なりの持っている人間関係を使って口を聞いてもらうわけだ。自分は何も努力をしていない。

努力しないで有利な立場に立てるのならこんなにいいことはない。丸儲けである。しかし本当にそうだろうか。誰かのコネを使うということはその人の持つ人間関係にぶら下がるということに他ならない。コネで入った会社で失敗をしたり不正を働けば「あの人は〇〇さんの紹介で入った人で…」という”前科”がついて回る。当然自分に不利なことが起これば紹介してくれた人の評判にも傷がつく。

もちろんどんな立場でも悪いことをしてはいけないのは当然だが、例えばコネで入った会社を辞めて他の会社に転職しようとしたとする。理由はいろいろあるだろうがコネを使って入社していたら「嫌な上司がいるから」だとか「つまらない会社だったから」という理由はなかなか言い出しずらい。上司と喧嘩してケツをまくって辞表を叩きつけるなんてのは仁義にもとるというものだ。

つまり自分ではコネを使っていい思いだけをしているつもりでも、その代わりに自分の人生の自由を差し出しているのと同じことだ。コネという見えない呪縛に絡め取られて自由を奪われていると言えないことはないだろうか。

自分だけが特別扱いしてもらって得意になっているうちはいいが、いざとなった時に身動きが取れなくなってしまったりしていないだろうか。エゴで手に入れた”お得”が、結局は自分を縛って自由をなくしてはいないだろうか。自由と引き換えに手に入れたエゴは果たしてお得だったのだろうか。それがわかるのは得をしたと思ったその時ではなく、ずっと先のことなのだ。

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