交通博物館

JRの秋葉原駅をラジオ会館の方に下りて、正面の通りを左折して万世橋を渡る。中央線快速のガードをくぐった右側に交通博物館があった。ちょっとうらぶれた佇まいだが鉄道好きの子供から大人までが集うワンダーランドだ。当時はまだ「オタク」などという言葉はなかったが秋葉原自体が巨大な電気店街だったこともあってちょっと変わった各種のマニアがそこら中を歩き回る街の片隅にそれはあった。

今では埼玉に鉄道博物館(テッパク)があるが、それまでは秋葉原の交通博物館が鉄道マニアたち(本人たちはレールファンと自称していた)の殿堂だった。入場券を買って中に入ると新幹線0系の運転台のカットモデルがドーンとそびえ立ち、その横には特急こだま号やSLの実物が置かれていて、初めて訪れた人たちの度肝を抜いた。

当時最新だったブルートレインやL特急「とき」、寝台特急「ゆうづる」などがズラリと並ぶその奥には巨大な鉄道模型のジオラマ(模型)があって何十編成もの鉄道模型が動き回っていた。当時幼稚園だったボクには体育館のような場所に思えたが、実際はどれほどの大きさだったのか今となっては知るすべもない。

決して体験型のテーマパークではなかったが子供のボクにとってはなんと魅力的な場所だったことだろう。ボクは飽きることなくそのジオラマの前で何時間も走り回る模型を見ているのが好きだった。ただ今にして思えばそれは必ずしも鉄道模型である必要はなかったのかもしれない。

当時ボクが住んでいた神奈川県の国鉄藤沢駅前には「さいか屋」というデパートがあった。その地下の食料品売り場の片隅には「さいか屋饅頭」という店があって全自動のまんじゅう焼き機が置いてあった。それはいかにもアナログでガチャンガチャンと音を立てながら次々に出来上がってくる饅頭を眺めているのも好きだった。いや決して饅頭が好きだったわけではない。ただ”メカ”が好きだったのだろう。

その後引っ越した横須賀にもさいか屋があった。偶然とは不思議なもので、神奈川県内には川崎、藤沢、横須賀の3つしかないさいか屋のある街の2つとボクは深い縁で繋がっていた。先日のローカルニュースでさいか屋横須賀店の閉店が伝えられていたが、ボクにとっての一つの時代が終わってしまったように感じている。

ところが今住んでいる同じく神奈川県の平塚では、駅前の「都まんじゅう」という饅頭屋にやっぱり全自動饅頭焼き機が置かれている。この饅頭屋は50年以上も昔から最新鋭の全自動饅頭焼き機が導入されており、平塚に住む親戚の家に遊びに来た時はやはり何時間も饅頭焼き機の前に張り付いて飽きることなく眺めていた。

そうするとボクは昔から決して鉄道が好きだったわけではなく、さいか屋のファンだったわけでもなく、饅頭が食べたかったわけでもなく、ただただ全自動で何かが作り出されてくるメカが好きだっただけなのかもしれない。

その後、飯田橋にあった学校に通うようになってからも電気街としての秋葉原には足繁く通うことになるのだが、すぐ隣にある交通博物館には行かなくなってしまった。そしてふと思い立って足を向けた時にはすでに閉鎖されて工事の柵で覆われてしまった。

ボクが幼い頃に憧れて通ったところは次々に姿を消していく。先日、横須賀の実家に行こうとしたら、道がすっかり変わってしまって家にたどり着けず、Googleマップのナビにお世話になったことは内緒だ。

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