立山連峰あっての富山県

何年か前に富山を車で旅行した。旅行したといっても岐阜の高山から延々と続く高速道路のバカ長いトンネルをいくつも抜けて、やっと富山県に辿り着くころには疲れ果てて意識も遠のかんばかりのありさまだった。それでも北陸自動車道の立山インターチェンジを降りるころには砺波平野から富山平野に続くの広々とした景色に癒されて清々しい気分になっていた。

高速道路の立山インターチェンジを降りると、眼前にいきなり立山連峰の山々がそびえ立つ。天気に恵まれれば、春の雪解けの季節には平野の新緑にまだ雪の残る山々とのコントラストが眼に眩しい。まだ田植え前の田んぼの中の一本道を折れて坂道を登っていくとその素晴らしい景色は、やがて立山の険しい山々に呑み込まれてしまう。そしてしばらく走ったところに大岩山日石寺がある。

大岩山の金毘羅宮は”大岩のお不動さん”とも呼ばれる不動明王を祀った真言密教の大本山である。我々は意図してその場所を詣でたわけではなかった。罰当たりなことだがその地で古くから旅館を営む「だんごや」という旅籠に泊まって名物の「大岩そうめん」などを頂くことにあった。そうめんはもとより旅館のすぐ近くには「大岩不動の湯」という公衆温泉施設もあって、閑静な富山の奥座敷という佇まいだ。

と観光ガイドはここまでにして、富山県民は皆んなきっと立山の景色を誇りに思っているのだろうと思う。ボクが見ても富山市内から見る立山連峰の景色は息をのむほど素晴らしい。しかし富山の観光スポットというとカニや寒ブリやらホタルイカや鱒の押し寿司が宣伝されるばかりで富山市周辺から見る立山連峰の景色の話題はあまり出てこない。

その時に泊めていただいた旅館でももちろん名物の大岩そうめんはいただいたのだが(とても美味しかったのでお土産にも買ってしまった)、その他にも大皿いっぱいのホタルイカが振舞われた。そのホタルイカが美味しかったのは言うまでもないが、食卓いっぱいに宿のおばあちゃんが今日採ってきたばかりの山菜が並べられていた。その美味しさといったら今まで食べたことのないような香り高さとほんのりとした野趣が素晴らしいものだった。

富山といえば宇奈月温泉や黒四ダム観光、氷見漁港の寒ブリなどが有名で観光客が押し寄せているというが、ボクらが訪れた大岩山日石寺の周辺はGWの真っ只中にも関わらず静かな風情を保ってそこにあった。

とてもいいところだったのであまり宣伝したくはないのだが、実にもったいないことだと思う。おそらく観光で富山を訪れる人の多くはこんな素敵な場所がまだ残っていることに気づいていないのではないかと思う。「灯台下暗し」とはよく言われるが、身近にあるがゆえにその魅力に気づかないということは多い。

ボクに言わせれば、できればこの場所はいつまでも静かな鄙びたところであって欲しいと思うのだが、旅館や食堂を経営していくにはもう少しお客さんも増えて欲しいと思っているかもしれない。現にだんごやの並びにある旅館や食堂は多くが閉鎖されてしまっていた。そんな素晴らしい環境にある素敵な旅館が、できればボクのために長く営業を続けていて欲しいと思うのはただのエゴなのだろうか。

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