スペクトラム

まだ世の中が昭和だった頃、風邪薬のCMで

♪ヒンナスペ〜〜〜♪

と歌っていたバンドがあった。「スペクトラム」というバンドだった。実際の歌詞は「イン・ザ・スペース」なのだがリードボーカルの男性の甲高い声を聞くとそう聴こえた。クラスでは誰もバンド名など知らなかったが、ベンザエースのコマーシャルで何度も聞かされていたので歌を知っている人は多かった。

スタジオミュージシャンでトランペットの新田一郎がリーダーで、同じくTpの兼崎順一、サックスの中村哲などが作ったホーン・スペクトラムというブラス・ロックバンドだ。元々がスタジオミュージシャンなのでその演奏が超絶技巧なのは当たり前なのだが、金ピカのステージ衣装を着てステージ上でトランペットやトロンボーン、ベースギターをグルグル回したりと、ちょっとしたキワモノの色物系バンドだった。

それでも中高生のブラバン程度では及びもつかない超絶技巧なトランペットやトロンボーンなどでブラバン小僧の間ではアイドルになっていたが、一般に売れたかと言われれば売れないバンドだったと思う。しかも同じ事務所には当時絶好調だったサザンオールスターズなどが所属していて、彼らと比べられてしまうのだから可哀想といえば可哀想な運命だ。

「バンド・ピープル」というブラバン小僧向けの雑誌があった。今でもあるのかどうかわからないが、高校野球の応援の時にしか注目されない弱小クラブが校内でモチベーションを保つにはそれなりに大切な雑誌だったのではないかと思う。その中でもスペクトラムは「神」のような存在として崇められていた。ボクも何枚かレコードを買ったが時代がCDに変わった後に改めて買い直すほどのものではなかったので、もしかしたら今でも押入れのダンボールの中に残っているかもしれない。

それまでも「高橋達也と東京ユニオン」や「原信夫とシャープス&フラッツ」、「見砂直昭と東京キューバンボーイズ」、「ダン池田とニューブリード」といったビッグバンドが名を馳せたことはあったが、ポップスのJロックバンドとしては後にも先にも吹奏楽器をフューチャーしたバンドが注目を浴びたことはないように思う。

万人の間で全国的な大ヒットをしたわけではないが、ごく一部のコアなファンの間でも熱狂的な人気を博したというのは、今となればマーケティングとして成功したと思っているが、レコード会社の経営側から「バンドの方針などに拘っていないでサザンのような大ヒット曲を出せ!」と言われてバンド自体が崩壊してしまったのは、ちょっと寂しいなと思うのである。

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