行列のできない店

人気のある店の前には行列ができる。ボクが生まれた50年以上も前から見られた光景だが、その頃は行列のできる店はかなり限られていた。それでも横浜中華街の海員閣の前には常に行列ができていた。ほんの小さな小汚い店(失礼!)なのにである。最近は中華街にも足が向かないので今のお店がどうなっているのかは知る由もない。

高校生の頃、たまたま用があって中華街を通りぬけようと思った時、ふと思い立って海員閣の前の路地を歩いてみたが、お店の前の列はさらに長くなっていた。もっともボクは海員閣には一度も入ったことがないのでどんな魅力が長い行列を作らせるのかわからない。ただガイドブックには「絶品料理を出す店」として常に話題だった。また行列が行列を呼ぶ効果も大きいのだろう。

行列の最後部に並んでいる人に「何で並んでるんですか?」と訊くと「何だかわからないけどみんなが並んでるから」と答えるという新聞の4コマ漫画があったが、あながち笑い話だけではない。

今はネット上に「食べログ」などの口コミサイトもたくさんあって話題には事欠かないのだが、ボクはこのテの口コミをあまり信じていない。もちろん書いた人は本当にそう思って書いているのかもしれないしそれを否定しようというのではない。ただ食べ物の味や好みには個人差や好き嫌いがあるのだから、誰かが食べて美味しかったものが全員に受け入れられるわけではない。事実、実際に訪れて「美味しい!」と思ったお店が口コミサイトで酷評され、「もう二度と行かない!」と書かれていたこともある。他人と自分が常に同じわけではない。

一頃ニュースにもなったが、口コミサイトの運営会社やサイトに掲載されている店がヤラセの口コミにお金を払って買収していたということがあった。運営会社にしてみればいい口コミを集めれば評判のいいお店はお金を払って契約を継続してくれるだろうし、お店にとっても集客力は大きな魅力だ。経済的にも理にかなっている。騙されるお客はいい面の皮ではあるけれども。

そんなことを言ったらきりがない。楽天でもAmazonでも出店者がお金を払って人を集めてニセの口コミを書かせているケースはいくらでもある。今でも言い回しのおかしな日本語でレビュー(評価)が書き込まれているのはいくらでも見かけるし、正当な評価よりもニセのレビューの方が多いくらいだ。

しかし2月以降のコロナ騒ぎで風向きは変わるかもしれない。店の前に行列を作らせて満員の店内にお客を詰め込むようなお店は、少なくとも現状では評価されにくいし、営業を続けているというだけで世間から叩かれかねない。

政府の言う「新しい生活様式」の中で行列がどのように国民の中で消化されていくのかはまだわからないが、少なくとも「Withコロナ」の暮らしが続く中では今まで通りの商売は成り立たなくなるだろう。ネットワークを駆使した”ハイパーな予約制度”が登場して”密”にならないような工夫が一般的になるかもしれない。

静岡県内にある「さわやか」という大人気ハンバーグファミリーレストランチェーンでは通常の平日でも数時間の待ち時間が普通だった。だからお店に行って受付をするとシステムから整理券が発行され、自分の順番が近づくとスマホにお知らせが来るという仕組みを取り入れていた。順番を待っている人はその間お店の列を離れて別の場所で他の用を済ませることもできる。簡単だが効果的な取り組みだ。

そんな「新しい生活様式」の中で「行列のできない店もいい店だ」ということになればありがたい。満員電車と渋滞と行列が大嫌いなボクにとってはこれこそがまさに求めている「新しい生活様式」なのだ。それともしばらく経ったらやっぱり日本人は行列を求めて並ぶのだろうか?

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