ヘア・ドネーション

ヘア・ドネーションという言葉を聞いたことがあると思う。小児がんや先天性の脱毛症、事故などで頭髪を失った子供のために、寄付された髪の毛でウィッグ(カツラ)を作って無償で提供する活動だ。当初は地味な活動で認知されなかったが、日本でも有名な女優さんやタレントが参加したことで認知度が上がったらしい。

高校の後輩に髪の毛を長く伸ばしていた女の子がいた。その子は卒業後、看護学校に進学してその髪の毛をバッサリと切ってヘアドネーションした。もっともその頃はヘア・ドネーションなどという言葉もなく、自分で医療関係者を通じて寄付された髪の毛で小児がんの子供を支援している団体を探して寄付したのだという。超ショートボブになったその子は「スッキリして頭が軽くなった」と笑っていた。

伸ばしていた頃には毎日髪を洗うだけで1時間もかかっていたのだという。彼女が最初からその目的のために髪を伸ばし始めたのかどうかはわからない。高校入学当時で腰のあたりまであったから50〜60センチはあっただろう。まったくクセのないストレートヘアでとても綺麗な髪だった。小学生の頃から伸ばし始めたというから、高校3年生までの10年近くをその髪の面倒を見ながら過ごしてきた訳だ。

「ヘア・ドネーションする」と口にするのは簡単だが、実際に行動してコンファームするには大変な努力と我慢が必要だったはずだ。人にもよるが髪の毛は1日に約0.3〜0.4ミリ伸びると言われている。1ヶ月で1センチ、1年で12センチほどだ。ドネーションするには最低でも30センチほどの長さが必要だという。女の子なら伸ばしっぱなしでボサボサ髪というわけにもいかないだろうから時折先端近くを切らなければいけないので、3年ほどはかかる計算になる。

ボクは髪を伸ばしたことはないが、床屋に行ってから1〜2ヶ月も放っておくと長くなって鬱陶しい。最近では夏になると刈り上げたりするほどなのでその鬱陶しさは筆舌に尽くしがたいほどのものに違いない。それを10年間だ。かなり気の遠くなる話である。

大人になってからも友人がヘア・ドネーションしたという話を聞いた。ある時、久しぶりに会ったらショートボブになっていた。似合っていたので「髪切った?」とタモリ風に訊いただけで特に理由は聞かなかったのだが、ある時飲み会の席でヘア・ドネーションしたのだと聞いた。ここにもまた限りなく我慢強い友達がいた。ボクの周りの友達はこんなにも我慢強いのに、ボクだけが何ともだらしないのはどうして何だろうと自己嫌悪に陥った。

世の中には高邁な信念を持った素晴らしい人がたくさんいる。ボクもそんな人の行動を遠くから見ているだけではなく、自分も何かの力になりたいと思うのだが、思うばかりでなかなか行動できないでいる。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください