欲しくないものを買わせる方法

■ 「お好きな席へどうぞ~」
最近は大抵のレストランではお店に入ると店員さんが「こちらのお席へどうぞ」などと案内してくれることが多いのですが、たまにお店が空いている時間に行くと「お好きな席へどうぞ~」と言われることがあります。僕はタバコの臭いがしなければどの席でも構わないのでとりあえず近くの空いている席に座ります。でも中には「ご自由に~」と言われて真剣な表情で悩んでいるお客さんを時々見かけます。何を悩んでいるんだろうなぁと思いますが、普段から何をするにも指示されることの多い社会ですから「好きにしていいよ」なんて言われるとかえって悩んでしまうのかもしれません。
でもこれは、人の一般的な習性でもあるのです。基本的に人は考えることを”面倒くさい”と思う傾向があります。どうしたらいいかを自分で考えて一番いいと思ったように決める、のはエネルギーを使うからです。誰かに指示されるのが一番ラクなので、ほとんどの人は誰かが指示を出してくれるのを待っています。そういう人はレストランで席についても、メニューが豊富だと迷ってなかなか決められません。かといって1つか2つしか選べなければ、それはそれで不満です(笑)

■ 複雑なのは嫌われる
物にもよりますが人がストレスなく選べる種類は5~6種類と言われています。3種類だと少な過ぎるし7種類だとちょっと重たい感じです。そして人気が集まるのは値段の順であれ性能の順であれ上から2~3番目が一番多く売れます。ですから商品のラインナップを考える時には”最も売りたい商品”が上から2番目になるように、高性能なもの高価なものや低価格で機能が最低限のものを上下に配置するわけです。10種類以上も並んでいたらたぶん、お客様は選ぶのをあきらめてしまうかもしれません。そこに優秀な販売スタッフやアドバイザーがいてお客様が選ぶのをお手伝いしたとしてもです。
しかし現在、既にあなたのお店では商品ラインナップが非常に多く、お客様がそれを選ぶのを負担に考えているとしたらどうでしょう?

■ 好みを想定してセットを作る
もちろん商品のラインナップが豊富なのは悪いことではありません。お客様が自分の好みやニーズにより近い選択をできるはずですから。問題はそれを選ぶのが面倒くさい、選びきれないということです。こんなときによく使われるのがセット販売です。季節になるとスーパーの売り場などでも肉や野菜、スープやタレをまとめた「バーベキューセット」や「鍋セット」が飛ぶように売れています。それぞれの材料をあちこちの売り場で考えながら選ぶより面倒くさくないからです。1人分、2人分、3人分程度のラインナップを揃えておけば、あとは人数に合わせて組み合わせるだけです。マクドナルドなどのファストフードなどはハンバーガー一つだけを注文すると「単品ですか?」と胡散臭そうに聞き返されることがあるくらいセットが全盛です。そしてセット商品は安い、かというと必ずしもそうではないところが面白いところです。

■ 欲しがっていないものを売る
例えばマクドナルドにビッグマックを買いに行ったとしましょう。ビッグマックの単品が仮に350円だったとします。自分はビッグマックとコーヒーを注文するつもりでしたが、メニューを見るとビッグマックとコーヒー、ポテトのセットが580円です。コーヒーは単品で150円、ポテトは200円です。つまり欲しいものだけを単品で買うなら500円ですがセットなら200円のポテトが80円追加するだけで食べられるのです。そしてほとんどの人は80円を余計に出してセットを注文するのです。だって得じゃないですか? 200円のポテトを80円で食べられるんですから。
でも本当にそうかな?本当に得をするんでしょうか?
自分が欲しかったのはビッグマックとコーヒーだけだったんです。ポテトは別に欲しくなかったんです。だってランチにマクドナルドのポテトを食べると、その日の午後は必ず胸焼けするんです。ポテトなんて欲しくなかったのに80円”も”余計に払って得をしたつもりになって”いらないもの”を買っちゃうんですね。人って面白いですね。お店は、黙っていれば売れなかったポテトをセットに含めることで買わせてしまったわけです。そしてお客様には「得した!」と喜んでいただける。これぞ正にWin-Winの関係でしょう。

■ 送料無料のワナ
最近ではネット通販が大流行です。Amazonなどではプライム会員という有料会員になると送料が無料になるサービスなどもあります。まぁアレは商品代金の中に送料も含めて売価設定をしているだけなので、他のネットショップで同じ商品を比較するとAmazonの方が送料分だけ高かったりします。でも送料が”無料”になるとこれまた得した気分になっちゃうんですね(笑) ヨドバシカメラなどでは登録会員に付与するポイントの分だけ高く売られていたりします。他の店でポイント分を安く買えば現金で手元に残って他の店で買うこともできるのに、わざわざそのお店でしか使えないポイントにしてしまっているわけです。
またこのシーズンになると「クリスマスセール」などと銘打って「5,000円以上買うと送料無料」なんていうキャンペーンも多いですね。「あ~4,250円かぁ。あと他に欲しいものない?」などと家族にまで聞き回って1,000円位の”欲しくもないもの”を買ってしまったりするわけです。750円の送料と引き換えに…。ただ”送料”に盗られるよりモノになって残ったほうがおトクな感じがしませんか?しますよね?
でもそれって”いらないもの”だったんですよ(笑)