何人必要なんだ?

新型コロナウイルスの蔓延を受けて医療現場が崩壊しつつあるという。そりゃそうだ、今回のウイルスは感染力はある程度強いものの感染した人が発症したり重症化する率は今のところ少ない。それなのに症状の出ていない、一見健康な人を病院に入院させてきた。感染していても症状のない人に医療のリソースを割いてしまえば重症の、医療のサポートが必要な人のところに手が回らなくなる。

地震やテロの時と同じような「トリアージ」の手法を感染症のケースにそのまま当てはめることはできないが、適材適所で配置することを最初から考えておかなければならなかったということだ。その点で政府はこの感染拡大を甘くみていたと言わざるを得ない。

政府や行政のリーダー達は「今月末までに(病院の)収容人数を2000人まで増やします!」などと自信たっぷりに言っているが、仮に建屋やベッドを増やすことができてもそこに必要なスタッフを急に増やすことはできない。人工呼吸器は増産できても医療スタッフを増産することはできない。人を養成するためには何十年というスパンで考えることが必要だ。

プロジェクトマネジメントを行うプロジェクトマネージャー(プロマネ)には往々にしてこのような人が多い。プロマネはプロジェクトの実行に必要なリソース(ヒト・モノ・カネ)やスケジュール(時間)を管理するのが仕事だ。カネに色は付いていないから必要なだけかき集めればことは足りる。モノも必要な機能が備わったものを必要な数だけ調達できればカネを払うことで実現できる。

しかしヒトはただ頭数を揃えればいいというわけではない。必要な能力を持った人を必要な数だけすぐに揃えろと言われてもいないものはいないのだ。しかし多くのプロマネは現場が行き詰まってくると必ずこう言う、「あと何人必要なんだ?何人いれば廻せるんだ?」と。頭数だけで解決できるならこんなに楽なことはない。臨時にアルバイトでもなんでも雇えばいい。

しかし必要なのはその業務ができれば効率的にこなせるプロフェッショナルなのだ。プロマネもそんなことが簡単にできるとは思っていないので頭数の問題にすり替える。頭数だけ揃えて現場に送り込んで「人数が欲しいというから揃えたのにどうして上手くやれないのか」と現場に責任を押し付ける。最初から頭数だけ欲しいなどとは一言も言っていないのにプロマネは責任逃れをする。

総理大臣や東京都知事に一般常識以上の医療の知識などあるわけがない。しかしシロートを頭数だけ揃えても解決しないこともわかっている。それでも「できません」とは口が裂けても言えない。次の選挙で負けてしまえば失業者だ。だから数だけ揃えて後の責任は現場に押し付ける。「できなかったのは現場が無能だからです」と言わんばかりに。

やがて現場は破綻する。しかし破綻したからといってゲームオーバーにはならない。破綻した中で現実に立ち向かっていかなければならない。朝から晩まで終わりの見えない作業が延々と続く。そんな中でヒトの心は崩れていく。するとプロマネはまた「あと何人いれば大丈夫なんだ?」と問いかけてくる。

そんなときにはこう言ってやりたくなる。

「あんたもこの中で一緒に作業してみろ!すぐにわかるだろ!」

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