暖冬だった年は…

「暖冬だった年は桜の開花が遅い」といつの頃からかまことしやかに言われてきた。冬の寒さがないと春になっても桜がなかなか目覚めないからだとか天気予報ではもっともらしいことを言っていたが、今年はそのことの真偽が確かめられることだろう。とても楽しみだ。しかしそんな話をしていたことなどすっかり忘れたフリをして早い春の訪れと新型ウイルスの蔓延で中止されていくイベントを残念がっていれば誰も今までの桜の開花時期の説との矛盾に気づくものなどいないだろう。

少しでももっともらしいことを言うとそれを鵜呑みにして信じてしまう人が大勢いる。最近ではマスクを増産したら紙が足りなくなるからトイレットペーパーやティッシュ、生理用品が不足するだとか、トイレットペーパーのほとんどは中国で作っているから中国からの輸入が滞ったら手に入らなくなるとかもっともらしい理由をつけて吹聴する人が必ず出てくる。もっともらしい理由をつけて語ればそれらしく聞こえるがぜんぶ嘘っぱちである。まごうことなきデマだ。

随分前の話だがオイルショックの時にも石油が輸入されなくなったら石油から作られているトイレットペーパーがなくなるなどという嘘を吹聴した奴がいて世の中はトイペパニックになった。一時はスーパや薬局の棚からトイレットペーパーやティッシュペーパーが一気に姿を消したがそもそもそれらは石油製品ではない。どうしてそんなことがわからないのだろう。

しかしそんなデマは今までも数限りなく出てきた。味の素を食べると頭が悪くなる、マグロを食べると頭が良くなる、サバやアジを食べると頭が良くなるなどと言われてスーパーの鮮魚売り場では♪魚を食べると〜頭、頭、頭〜、頭が良くなる〜♪などという曲が流されていた。いくら魚を食べても勉強しなければ頭が良くなるわけがないのは考えなくてもわかることだ。そしてそんなことなら漁師はみんな頭がいいはずだが、知り合いの漁師を見ていると決してそんなことはない。(いや頭のいい漁師もいないわけではありません、念の為)

子供の頃にはパンを食べると頭が良くなってお米を食べると頭が悪くなると言われていたが、結局はアメリカが日本に小麦をたくさん輸出したいための方便だった。だから日本の給食はすべてパン食だった。そんな根拠はまったくないしその後給食がご飯食になったからといって子供の頭が悪くなったという話も聞かない。今ではそんなことは嘘だということを誰もが知っている。それでも味の素をはじめとする化学調味料は敬遠されているし明日もスーパーの棚にマスクやトイレットペーパーがふんだんに並ぶことはないだろう。

WHOは「ウイルス感染の予防にマスクは効果がない」と言い始め「意味のないマスクの着用はやめるべきだ」とまで言っている。今までの主張と180度の方針転換だ。しかしマスクは風邪やインフルエンザウイルスなどの感染予防に一定の効果があることは間違いない。マスクに意味がないのなら手術室のドクターや看護師はなぜマスクをしているというのだろう。おそらくこれは世界中でマスクの供給が滞り各国の政府やWHOが槍玉に挙げられるのを回避するための保身だ。

そんなことを言い出す時には必ず裏に隠された事情がある。しかもそれは思いのほか単純で利己的なものだ。誰もがすぐに思いつくような理由で複雑怪奇なトリックなどではない。それでも自分が悪者にならないために人は気の遠くなるような努力を積み重ねる。しかし子供の頃から繰り返し言われてきたように「一つ嘘をつけばそれを隠すために2つの嘘をつかなければならなくなる」のだ。こうして嘘の積み重ねは崩壊する。

トイレットペーパーもマスクも冷凍食品もしばらくすればまたいつも通りに手に入るようになることは間違いない。いくら買い占めが好きでも家にそんな大量にトイレットペーパーがあっても仕方ない。普段は呆れるほど賞味期限にうるさい人が卵や惣菜を山ほど買い占めている姿ははっきり言って滑稽だ。バカで愚か者だと笑われたくなければ常識で考えればいい。今の使い捨てマスクの多くは石油から作られた石油製品だ。なんてことを書くと今度は石油製品を買い占める輩が出てくるのだろうか。でも今のところ石油の輸入は滞っていない。

あらゆるリスクの可能性を考えたら自分が死ぬまでに使うすべてのものを買い占めなければ済まなくなるのだが、そのことの愚かさにさえ気づかない頭の弱い人は少なからずいるのだ。これは人類が一番恐れるべきリスクである。

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