はるばるきたぜ函館

と言えばサブちゃん(北島三郎さん)の「函館の女(ひと)」の歌詞だ。青森発函館行きの青函連絡船が函館の港に入るときには船内のスピーカーから大音量で流れた。

♪はぁ〜るばる来たぜ函館ぇ〜♪

1970年代だったある日、民放のニュースの冒頭でいきなりサブちゃんが流れた。ソ連からやってきた当時最新の戦闘機だったミグ25戦闘機が函館空港に強行着陸したのだ。乗っていたのはソ連軍のベレンコ中尉。亡命が目的だったらしい。米軍や自衛隊のレーダーに捕捉されないように日本海を低空飛行したのだという。ベレンコ中尉は自衛隊のF4ファントム戦闘機の追跡を振り切って北海道の函館空港に強行着陸した。その時にニュース映像のバックに流れていたのがあの歌である。

その後ミグ25戦闘機は自衛隊とアメリカ軍の手によってバラバラに分解された。そして秘密のベールに包まれ米軍からも恐れられていたミグ25の機体はチタン製ではなくステンレス製だったこと、電子機器には真空管が使われた著しく旧型だったことが判明したため元どおりに組み立てたあとソ連に変換された。

ベレンコ中尉はアメリカに亡命してしまったためその後の消息については日本で報道されることはほとんどなくなったが、東西冷戦の最中にソ連軍基地の待遇があまりにも劣悪だったために日本に逃げてきたという彼の発言には涙した人もいたという。

それにしても日本の安全保障を揺るがすトップニュースでBGMにサブちゃんを選んだ放送局の担当者のセンスは素晴らしい。その日の夜7時のNHKニュースにはそんなセンスが全く感じられなかった。

国家防衛の一大事とはいえニュースを見た一国民がいたずらに恐怖を感じたところで何もできない。それならいっそのこと笑いのセンスを取り込んで大衆を取り込んでしまおうとした民放の方がNHKよりもはるかに戦略的だったのではないだろうか。

報道もただ事実を伝えるだけではなく何らかの意図を持って放送されている。事実を歪曲して誤解を生み出すようなやり方はもっての外だが、このニュースを受け取った人の心をいたわるようなやり方には降参させられたものである。

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