殿方は新品がお好き

ボクが学生時代を通して育ったのは神奈川県の横須賀という土地だ。横須賀がある三浦半島というのは断層も多く山がちな地形であり、わずかな平地はそのほとんどが米軍基地で占められている。半島を縦断するように京浜急行という私鉄が走り、京急や西武などの大手私鉄会社の不動産開発による住宅地があちこちで行われたため一時は人口が急増した。
ボクが小・中学生の頃には学校のクラスは1学年で300人をゆうに超えて全校で1500人というマンモス校も普通だった。実際に中学・高校のクラスは50人学級が10クラスを超え、同じ学年でも口を聞いたこともなく顔も知らない同期などザラだった。

そんな横須賀でも人口増加はピークを過ぎて今ではかなりの勢いで人口が減っている。一時は43万人を超えていた人口も現在では40万人を割ってしまった。それに伴い市内では空き家の増加が問題になっている。しかし人口は減っても世帯数だけは右肩上がりで増えているのだ。これは若い世代が結婚や就職などをキッカケに実家を離れて一人や二人、ないしは核家族化による夫婦と子供だけの世帯が増えていることによるものだろう。

実家を出て新しく居を構える時には気分一新という意味もあって日本人は新築住宅や新築マンション、新築アパートを好む傾向がある。古くから日本の住宅はほとんどが木造建築で、数百年もの長期にわたって住み続けることが困難だったために数十年に一度は立替える必要があるという事情もある。伊勢神宮や春日大社などの神様のお住まいも20年に一回くらいは式年遷宮といってお社を立て替えている。宮司さんが冗談めかして言うには「神様は新しいものがお好き」なのだそうだ。そんな古くからの血を我々日本人は引き継いでいるのかもしれない。

欧米では石造りの建築物が多いせいかどこの街に行っても遺跡のような古い建物を上手に手入れしながら暮らしている姿を見かける。もちろん大都市に行けばそれなりに新築の物件がないわけではないがタワーマンションが林立するような場所はあまり見かけない。彼らは前衛的なデザインの建物は好きで駅舎やスタジアム、官公庁では目を覆いたくなるような派手な建物を作るがそれはほとんどが公共物に限られている。

それぞれの住宅は何世代にも渡って住み続けてきた家もあれば好んで古い建物をリフォームしながら大切に住んでいるのだ。そのせいかどうか定かではないが街中でも郊外に行っても内戦などによる廃墟はあっても空き家はほとんど見かけない。

日本人の男は処女が大好きだと言われる。基礎科学研究所の調査によれば「結婚するなら処女がいい」と言う男性は92.6%にも及ぶのだという。お手付きされていないピカピカの新品を好むのは日本人の特性なのかもしれない。まっさらなほうが気持ちがいいという感覚的なものもあるのだろうが一説によれば「他の男性と比較されたくない」という自信のなさも垣間見えるのだという人もいる。

新品にそれなりの良さがあるように使い込まれたものにも安定した安心感がある。古く使い込まれた楽器やスマホのアプリなどでも新しくリリースされた最新版よりもたくさんの人が使い込んで不具合が少ない安定版を好む人は多い。そんなことを考えるようになったのも自分が使い古された旧型人間になったからなのだろうか。

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