お役所仕事

お役所仕事といえば非効率と不合理の典型のように言われる。何をやるのも二重三重の重複した書類と窓口のたらい回しが当然で、星新一のショートショートにも会社設立の申請に役所に行ったらあらゆる窓口をたらい回しにされ挙句は最初の窓口に戻ったという話があった。日本に役所は市役所だけでも市民課や戸籍課、納税課、福祉課、下水道課、国民保健課など様々な窓口があって受付や申請がワンストップで終わることは絶対にない。

「縦割り行政」とはよく言われる言葉だが、役所では隣の部署でやっていることでいつも目にしていることであっても自分の部署の仕事ではないと判断したら一切関わろうとはしない。もう一度申請書類を用意し直してから隣の窓口の行列に並び直さなければならない。普通の人間の感覚では考えられないことだが彼らはそれが当たり前だと思っているので理不尽だとも非効率だとも思わないようだ。それに効率化してしまってもどうせ人員は削減されないのだからダラダラと楽に仕事ができた方が楽チンなのだ。

市役所、法務局、税務署、水道局、社会保険事務所、年金機構などそれぞれの部署で届けや申請をするためには部署ごとに戸籍や住民票の提出を求められる。そのためには1枚400〜500円の手数料を払って証明書を交付してもらわなければならない。そして手続きをするたびに免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類の提示を求められる。では一体マイナンバーはなんのために導入したのだろうか。役所の中はコンピュータがオンラインで繋がっているのだからマイナンバーカードさえあればそれで本人確認は全部済むようにするはずだったのではなかったのか。そのために国会で法律を作ったり改正したのではなかったのか。結局は「消えた年金問題」を解決するためだけの言い訳の施策に過ぎなかったのだろう。せっかく情報を1つの番号に紐づけて管理できる仕組みが出来上がったのに誰もそれを活用しようとしないのはどういうわけだろうか。

消えた年金問題が発覚するまでは年金データは名前としか紐づけられていなかった。だから同姓同名の人がいればどちらに紐づいたデータなのかわからなくなる可能性があった。これは人と年金データが”多対多”の関係になっていて、元データベースエンジニアの立場から言わせてもらえば全く設計すらできない状態だ。かつてはそれを紙の書類で管理していたというのだが紙だろうがコンピュータだろうが物事の本質は変わらない。1対1で対応していないデータをどうやったら管理できると誰が思ったのだろうか。考えなくてもわかることだ。頭がおかしいとしか思えない。

お役所仕事はすべからくこんな調子である。1つの書類で関係が明らかになっているにも関わらずその業務専用の別書式の証明書を”有料で”取り寄せなければならなかったりする。それを社会保険事務所からかなり離れた場所にある市役所に行って取って来いなどと平気な顔をして言い放つ。「お前が逆の立場だったらどう思うのか!」と言ってやりたいが窓口に立っている小役人にそんなことを言っても埒が明かないので仕方なくそんなアホらしい手続きに付き合わざるを得ない。

日本企業の生産性の低さが政府でも議論されているが一番生産性が低いのはお役所である。経済学では「X非効率」と呼ばれライバル企業のいない独占や寡占状態の場合に企業間の競争がなくなって非効率でも生き残れる状態が生まれたりすると効率化の努力をしなくなるのだ。これは以前の電力会社やガス会社、電電公社や郵便局などに見られた普通のことである。そんな足元の問題すら解決できない政府が一般企業に口を出すなど100万年早いというものだ。おととい来やがれ!

星新一の場合は「実は一瞬で処理は終わっているのですがあまり簡単に受理されてしまうと新しいご商売に身が入らないだろうと思ってわざとたらい回して苦労するようにしているのです」というオチだったが、日本の公務員にはそんなセンスはないだろうなぁ。

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