ドラゴンレディ

映画「彼女が水着にきがえたら」は前作「私をスキーに連れてって」に続くホイチョイプロダクションの2作目である。原田知世さん主演のこれらの映画は贅沢三昧のお洒落な生活を「これでもか」というほど見せつけて、折からのバブル景気もあって可処分所得がふんだんにあった若者の心を強く刺激した。

「私をスキーに…」の影響で空前のスキーブームが訪れ、当時、ボクが働いていた「山とスキーの店」では置いてあったスキーウェアが最後の一着まで売り切れるという経験をした。スキーウェアは一応ファッションである。100着在庫があってその中からやっと1着売れるかどうかと言われていたのに、夜になって店に飛び込んできた女の子が「何でもいいからスキーウェアをください!あぁもうスキーバスが出ちゃう…」と言いながら最後に残った(もっとも不人気だった)ウェアを買っていくような時代だった。

それに続く「彼女が水着に…」では湘南の海を舞台にヨットとクルーザーで優雅に遊ぶオトナの雰囲気を演出していた。名目はずっと昔に墜落した飛行機の財宝を探すことだったがお洒落なパーティークルーズや水上バイクでの派手なアクションなどバブルを象徴するような場面が続いて若者の虚栄心をくすぐったのである。

宝探しは潜水艇やスキューバダイビングを使うのだが湘南の海が位置する相模湾は実際には透明度が悪く水温も低いので、海に飛び込んだ瞬間に水中には沖縄の海が広がるのだった。もっともボクは当時、スキューバダイビングなどやっていなかったからそんな事情は知らないで映画を見ていた。当時住んでいた横須賀からヨットハウス「クラブ・ヒッチ」があった設定の鐙摺(あぶずり)漁港は近く、いつも車で通っていた道だったので「あんなとこにバス停や公衆電話はない!」などと今でいう聖地巡礼のような感覚もあった。

それから7~8年後、ひょんなきっかけでスキューバダイビングを始め、沖縄県の慶良間諸島に行くようになった。そこで聞いたのが「映画のロケ地になった場所がある」という情報だった。そこには今でも撮影に使った飛行機の残骸が残されているのだという。とたんに青春の日々が思い出されて懐かしい気分になったものである。

スキューバダイビングではそんな水中景観を見て楽しむことも人気だが、一方で魚やエビカニといった水中生物の観察もとても楽しい。ボクはいつの間にかそちらの道に引きずり込まれてしまい、慶良間に通い始めて20年以上も経つが映画のセットがあるだけで生き物もあまりいないというそのポイントには未だにに潜ったことはない。

その墜落したという設定の飛行機の名前が「ドラゴン・レディ」だ。撮影から30年以上も海底に放置されてきたのだから恐らく今では原形もとどめていないのだろう。今更それを見たいという気持ちにはならない。思い出は思い出として懐かしい映画の記憶のままに残しておきたいと思う今日この頃である。

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