君が幸せになっても、誰も困らない

「君が幸せになっても、誰も困らない」
リクルートの就職情報誌「B-ing」の広告キャッチコピーである。意味深だが押し付けがましくもない。

「幸せになろう!」「幸せになる権利がある」などと言われてもあまりピンとこないし押し付け感は拭えない。ちょっとウンザリな気分だ。でも「誰も困らない」なら「幸せになればいいと思うよ」と優しく語りかけられるような気にもなる。誰かを押しのけて自分だけがいい思いをするのは古くからの日本人の気風にそぐわない(と思う)。最近では自分さえ良ければいいなどという”自分ファースト”が流行っているが、あまりにも「オレが、ワタシが」と前に出て行こうとするのもイヤラしく感じる。

マンガ「ドラえもん」の中でガキ大将のジャイアンは「オレの物はオレの物、オマエの物もオレの物」と言っていたが、それはガキ大将の横暴でありみんなに嫌われる根源だということを子供達に教えていた。しかし今の世の中は「オマエの物もオレの物」と言わないと「損しちゃうじゃないの!」などという下品な大人が蔓延って子供の優しい心を掻き回している。

先日のNHKの朝ドラの中で、立ち退きを迫られた場末のおでん屋の女将役だった女優の山口智子さんは、「この先のことはどうするの?」「オレが何とかするから」という立ち退きを心配している常連客に向かって「私のことはどうでもいいからぁ」と話したのは、その席にいた自分の引き取って育ててきた戦災孤児の息子の結婚を祝ってあげたい気持ちの方が強かったからだ。自分のことより誰かのことを応援したり心配するようなところが日本人にはあった。それが急激な経済成長を遂げていく中で、いつの間にか薄れてしまったような気がしている。

誰かが幸せになって自分が困るのは恋愛競争に負けた時くらいである。それでもシンガーソングライターの一青窈さんはかつての恋人に向けて「君と好きな人が100年続きますように」と歌っている。いつまでも心に優しさを持っていたいものだと思う。

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