コピーサービス

会社勤めをしていた頃、オフィスには必ず数台のコピー機が置かれていた。若い頃には”青焼き”と最新式の”ゼロックス”があって、よほどのことがないとランニングコストの高いゼロックスは使わせてもらえなかった。もっともその頃のゼロックスは白黒である。建築事務所でバイトしていた学生時代には毎日何百枚もトレーシングペーパーを抱えて千代田区麹町にあった街角のコピーサービスに通っていた。そのうちに米・ゼロックス社以外のコピー機も登場して青焼きは見なくなってしまった。

何十年もオフィスにコピー機があるのが当たり前の生活をしてきたが、パソコンやメールの普及もあって次第にコピー機の出番は減っていった。それでも印刷屋に勤めていた頃には会社自体が古くからの紙文化だったこともあって、送られてきたメールをプリントアウトして会議に持ってくる上司も多く見かけた。そんな職場にいたせいか顧客へのプレゼンテーションには資料を何十部もプリントアウトして持参するようなことが多かった。時代は平成に入ってずいぶん経っていたと思うが、のどかな時代だった。

最近訳あって、B4のカラーコピーを数百部取る必要が出てきた。A4ならスキャンしてデータで保存しておけばいいのだが、B4サイズのスキャナーなど持っていない。仕方なくネットで調べたら自宅のわりと近くにコピーサービスをやっている会社が見つかった。

ガランとしたオフィスに行ってコピーしたい旨を伝えると「そこのコピー機を使って自分でやってください」と言われた。10台ほどもあるコピー機の1台に原稿をセットすると5分ほどでコピーは終わった。その間にオフィスにやって来るお客は一人もいなかった。受付で代金を払って帰ろうとすると受付の女性が「ここは今月いっぱいで閉店になります」と言った。そうだろうなぁと思った。

それから2ヶ月後、再びB4のコピーを取らなければいけなくなった。前に使ったコピーサービスは閉店してしまったので近所のスーパーやコンビニ、市役所などを回って見たが、コピー機自体は置いてあるものの1枚ずつお金を入れて原稿を差し替えてコピーしなければいけないような代物しか置いてない。昔の赤電話の脇に10円玉を積み上げて長距離電話をする光景が思い浮かんだ。もう日本の社会ではコピーなんて使わなくなったんだよね。平成も遠くなりにけり、である。

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