毛嫌いされる中国製

「JAPAN AS NUMBER ONE(ジャパン・アズ・ナンバーワン)」という本を読んだことがあるだろうか。40年も前の本なのでご存じない方のために説明すると、1979年、アメリカ人のエズラ・F・ヴォーゲルによって出版され、当時は日本でも話題になったベストセラーだ。

日本人がまだ世界の一等国ではないとコンプレックスを持っていた頃、アメリカ人が「No.1の日本から学べ」と言ったことから「日本はアメリカ人からNo.1だと認められた」と狂喜乱舞した。ところが駐日アメリカ大使も務めたエドウィン・O・ライシャワーは「日本では禁書にすべきだ」とまで言ったという。日本で生まれ親日家だった彼は、この本を出版することで日本人が得意満面で傲慢になることを心配したらしい。その後日本ははからずも彼の杞憂した道を進んでいるように見える。

元来この本は、アメリカ人に向けて「日本から学べ!」ということを目的に書かれたが、アメリカ人にとって日本人は所詮「ジャップ」であり「イエロー・モンキー」に過ぎなかった。世界ナンバーワンのプライドを持つアメリカ人がこれを素直に認めることはなかった。結果的に日本に学んだのは中国であり韓国であり東南アジア諸国だった。

現在もアメリカは依然として銃社会であり日本と比べれば治安も悪い。人種差別問題は歴然として残り現職大統領でさえそれを隠そうとしない。しかし一方の日本でも男女差別は依然として残り、経済的・社会的弱者への虐待も横行している。それが今の日本だ。日本もアメリカもすべてバラ色なわけではない。特にトランプ政権以降のアメリカは国際問題でも袋小路に迷い込み、依然として抜け出す道筋を見つけられないでいる。もちろんかつてより良くなりクールになったところもあるがダメなところはダメなままであり悪くなったところさえある。利己的になり謙虚で全体の調和を考える日本人の特性も失われつつある。

今の日本人は声高に「クール・ジャパン!」と雄叫びを上げて得意になっているが、かつての教師だった欧米諸国をある意味で格下に見るようになり「西欧から学ぶことなどもうない」と横柄な態度を見せることさえある。

かつて”奇跡の経済復興”を成し遂げた日本だが、あの頃の日本は世界の先進国に追いつこうと必死にもがいていた。しかし今はどうだろうか。GDPでは中国に抜かれて世界第3位となったものの依然として経済大国であることに変わりはない。ところがそれと引き換えに裕福になった日本人はハングリー精神を失ってしまった。

50年前は欧米でも「日本製は安いがすぐ壊れる粗悪品」と言われていたし国内でも舶来品が珍重され、国産は2級品だった。安かろう悪かろうと言われた頃もあった。言っておくがほんの50年前の話だ。それが日本製は安くて高品質だと世界中で評判になるまでになった。それは先人たちの血の滲むような努力があったからに他ならない。

一方で国内では中国製品の評判があまりよろしくない。中国製品を毛嫌いする人も多い。ともすればすべての中国製品を粗悪品だと言う人までいる。確かにかつての中国製は不良品が多く、昔の日本製品と同様に品質は最低だった。ほんの50年前の日本製品と比べてである。しかし今でもそうなんだろうか。スマホ、家電製品、日用品、食品などなど、今でも中には粗悪品もあるし違法コピーが多いのも事実だ。

しかしボクたちの身の回りには驚くほど多くの中国製、韓国製、ベトナム製、タイ製、マレーシア製、バングラディシュ製品が溢れており、その多くで”不良品”だと感じることもない。逆に日本製だから絶対に壊れないなどということもない。かつての日本製がそうだったように中国製品も随分と良くなった。しかも日本製よりも安いのだ。

ニューヨークのタイムズスクエアに掛かる大きなネオンサインはちょっと前まで”SONY”であり”TOSHIBA”だったが、今は”SUMSUN”や”LG”に掛け変わっている。アメリカのテレビドラマに出てくる家電製品もSONYからSUMSUNになった。欧米の後を追いかけて工業国としてNo.1になった日本だが今では後から追いかけてきた韓国や中国に追い抜かれている。それはかつてアメリカが自動車や家電製品の分野で日本に追い抜かれたように。

そのアメリカはいわゆるハイテクの分野でGAFA(Google,amazon,facebook,apple)を始めとした企業が世界を席巻しようとしている。しかしこの分野で日本は大きく後れをとっており先は未だに見えない。

翼を得たイカロスは得意になって太陽に近づきすぎて蝋付けの翼は溶け、海へと墜落してしまう。ギリシャ人は古くからこのような教訓を自らのものとして戒めてきた。

多くのアメリカ人や中国人たちは貪欲に日本のいいところをしゃぶりつくそうとしている。果たしてこれからの日本人はこの貪欲さに伍して新しいものを創り出していかれるのだろうか。

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