究極の災害情報

先日、ニュースを見ていたら気象庁や自治体などが出す災害関連情報が”誰にでもわかりやすいように”変更されるのだと言っていた。確か去年の秋頃にもそんなことを言っていたような気もするが、その後の災害関連情報がわかりやすくなったという声を聞いたことはない。

その陰には、最近の自然災害による被害で自治体が地域住民に事前に警告しても実際に避難行動をとる人は全体の0.5%に過ぎないという事情がある。いくら自治体などが「災害が起きますよ」と触れ回ってもそこに住む住民が「オレには関係ない」と思えば逃げようとは思わない。

生まれてこのかた実際に災害に遭ったことのある人の割合は1億2千万人の日本に住む人の中ではほとんど0に等しい。こんなことを書くと筆禍を招きそうで、バカな失言で大臣を辞めさせられたどこぞの代議士のようだが、日本大震災や西日本豪雨、阪神大震災、福島原発事故、古くは関東大震災や広島・長崎の原爆投下まで、実際にその被害を直接体験したことのある人はすべての日本国民の中ではほんの一握りにすぎない。多くの国民が体験したことのある悲惨な体験といえば太平洋戦争末期の日本全国を巻き込んだ空襲くらいなのだろうが、それを知る人は年々少なくなっている。

自分が実際に遭遇してひどく辛い嫌な思いをしたことでなければ、普通の人にとっては基本的に”他人事”でしかない。以前に福岡で起きた飲酒運転による事故で子供が死んだことも、高齢者が車を暴走させて幼い子を轢き殺したこともすべては他人事だ。その証拠に「もう運転をやめよう」という高齢者はほとんど出てこない。

だからすべての人に切実な問題として認識させるには実際に辛い思いをさせるか、もっと危機感を煽って「避難しよう」という気にさせなければダメなのだ。そうしない限りは結局「あぁまた逃げろって言ってるね」くらいの認識しか持たないのである。

そして人は非常時には特に、端的に「なにがなんでも今すぐに避難しなさい」のように指示を単純明快にしなければ自分のやるべき行動を判断できない。今何をすべきかをハッキリと簡単な言葉で指示することが重要であるのと同時に「それをやらなければ次にどうなるのか」を示すことが重要だ。

気象庁や自治体の出す情報では判断すべき行動が複雑すぎて自分がどうしたらいいのかわからない。「土砂崩れ」と「河川の氾濫」では未だに別の基準で避難勧告などが発表されている。それは今回変更された新しい基準でも同じだ。そして一番深刻な状態でも「命を守ってください」なのだという。そんな言い方では誰の心も動かない。「残念ですがあなたはもう手遅れです。あの時に避難しなかった自分を恨んでください」のように”ここまで来たらもう諦めてください”というレベルを最後に設けておくことで「その前に行動しよう」と思わせることが肝心なのだ。

マーケティングで危機感を煽って購買につなげようとするやり方はある意味で卑劣でもあるが、「とにかく今すぐ行動させよう」とするときの情報の出し方は甘っちょろいやり方では意味がないのである。

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