不機嫌な天気予報

春から初夏になって清々しく晴れる日も多い。気候も良く爽やかで実にいい季節だと思う。陽が高くなった日中の日向など歩いていると少し汗ばむこともあるが、特に不快だとも思わない。夏真っ盛りの猛暑とは違う気持ちのいい晴天だ。そんな日の夜のニュースでは天気予報士が「今日は初夏の日差しが照りつけて汗ばむような暑い一日になりました」などと言っている。確かに初夏の日差しは照りつけていたし、人によっては汗ばんだ人がいたかもしれない。暑いかとテレビのレポーターにマイクを差し出されれば期待に応えて「暑い!」と答える人もいるだろう。実際に暑いと思っている暑がりの人もいただろう。しかしそれは圧倒的大多数の人の感想かといえば決してそんなことはないと思う。

暑くてムシムシしますねと訊かれれば「そうですね」と答える。いい天気で爽やかですねと訊かれれば「気持ちいいですね」と答える。大多数の人にとって天気や気候の話題はもっとも当たり障りのない会話のきっかけになりうる。青空を見上げて「爽やかですね」と話しかけた時に「いや、暑くて我慢できないほど不快です」と答える人は少ない。相手の言うことを否定しないのが天候を話題にするときの日本人の礼儀だ。そして相手の意見を肯定する自分の言葉は自分の気持ちに作用する。自分が気持ちいいと口に出せば気持ちいいようなポジティブな気分になり、暑くて不快だと言えば我慢ができないくらいの不快さを伴ったネガティブな気分になる。どちらも同じ日の同じ時間の同じ天気で気候なのにだ。

ニュースと一緒に放送されることの多い天気予報では当日の天気を振り返り翌日の予報をする。翌日から数日間の間に豪雨や暴風、台風や大雪などの可能性があればそのことに注意を促すことも大切なことだし、昨今の自然災害の発生を鑑みれば警戒を怠らないような注意喚起は必要不可欠だ。しかし「明日は雨」というだけで”ジメジメ”、”不快”、”洗濯物が乾かない”、”かび臭い”などのネガティブな話ばかりを持ち出すのはなんでだろう。

晴れの日があれば雨の日もある。四季折々の風情があるのが日本の自然の良さだとテレビでも日頃から言っているではないか。雨が降らなければ畑も田んぼも干からびて作物は育たない。晴れの日がなければ日照が足らずに作物も木々も草花も育たない。寒い冬があって暑い夏がある。梅雨には雨降りが多く秋空は変わりやすい。四季のそれぞれが大切な日本の自然だ。日本に住んでいる日本人なのだからそんな季節の移ろいを前向きに楽しむ心があった方が明るい心持になれるのではないか。

先日亡くなった日本の陸上の指導者の小出監督は選手たちにいつも話していたという。何が起きても「せっかく」と思えと。「せっかくケガをしたんだから体を鍛えるのはちょっと休んで頭を使うトレーニングをしよう」「せっかくオリンピックに出ないんだからいつものライバルを全力で応援しよう」「せっかく負けたんだから…」「せっかく風邪ひいたんだから…」。ともすれば下向きに、後ろ向きになりがちな選手たちに「せっかくなんだから」と声を掛けてヤル気を奮い立たせたのだという。

「春雨じゃ、濡れてまいろう」と言ったのは月形半平太である。土佐の勤王の志士で坂本龍馬の朋友だった武市半平太がモデルだと言われているがそんなことはどうでもいい。

天気予報も「寒い」「暑い」「ジメジメ」「カラカラ」と文句ばかり言ってないでもう少し前向きな気持ちで天気に向き合えば、明日の朝起きた時に雨が降っていたとしても「あ~あ、やっぱり」と暗い気分にならずにすむのではないかと思う。消極的でネガティブなことばかり考えているヤツに幸せはやって来ないし、決して成功もしない。

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