視聴率を獲れ!

3月と9月はテレビ番組の改変期といわれる。4月から、10月から新番組が始まるのに合わせてどこのテレビ局・ラジオ局でも特番(特集番組)が組まれて出演者たちの”卒業”が叫ばれる。しかし”卒業”とは学業を終える事であって、仕事の異動の意味はない。かくのごとくマスコミはいい加減である。普段から言葉の乱れを問題にしているのはマスコミだが、一番日本語を乱しているのは当のマスコミなのではないだろうか。

なぜ3か月や半年に一度番組を変えるのか、その事情は知らない。しかし業界では昔から1クール3か月といわれてドラマやバラエティ番組はそのタイミングで切り替えられる。恐らくは民放ならスポンサー企業との契約でそのように縛られているのだろうし、NHKなどもそれを真似たのか、出演する芸能人たちの都合を忖度しているのかはわからないが、同じタイミングで番組が切り替わる。改変期前の3月と9月は軒並み特集番組のオンパレードになってそれまでの番組を放送しなくなるので、普通に普段の番組を放映するのは実質的に5か月だ。だから何だと言うことではない。

番組を改変する理由は主に”視聴率”を上げるためだろう。だから普段から平均して高い視聴率の獲れる番組は長寿番組になる。スポンサーだって視聴率の獲れる番組なら自分のところのCMが多くの視聴者に見てもらえるわけだから宣伝効率もよく、契約を継続したがるのも無理はない。テレビ局や制作会社にしても番組が高視聴率ならスポンサーの獲得だって容易だし、今後も番組を継続してくれる可能性だって高くなるというものだ。そして何よりスポンサー料を値切られる心配も少なくなるだろう。まさにWin-Winである。

しかしそれはすべて番組を提供する側の理屈であって、そこに視聴者の姿はない。彼らにしてみれば「タダで見せてやってるんだから黙って見て泣いて笑ってりゃいいんだよ」ということなのかもしれない。確かに民放の番組を見るためにお金がかかることはない。だからテレビ局の、いかにも視聴者のことを慮って番組を作っているかのような言い草を聞くのは笑止千万だ。慮っているのは視聴者ではなく”視聴率”そのものだ。言ってみれば誰も番組を見てくれなくても、ビデオリサーチやニールセンの発表する視聴率さえスポンサーを満足させられる数字ならそれでいいわけだ。もっともこのネット時代になって視聴率調査の仕組みがどうなっているのかは全く分からないので、30年も前の知識で書いているので間違っていたらご容赦いただきたい。

流されるテレビ番組の視聴率が上がろうが視聴者にはどうでもいいことだ。ドラマが面白ければ観たくなるし、バラエティ番組で笑えれば来週も見たいなと思う。「視聴率が高い番組だから」といってテレビの前に行列ができるわけではない。「いい映画だな」と思うのは映画を作った人に対して思うことであって、お金を出してその映画を買ってきたテレビ局には何の感情も抱かない。それでも他局の番組を潰すために重要なタイミングでは人気映画をぶつけてきたりする。彼らにとって番組制作は芸術でも顧客満足でも何でもない。ただの勝負事なのだ。そこに視聴者の姿はない。

たまに「面白い番組だな」と思っても改変期にはバッサリと切られることもある。恐らく視聴率が悪かったのだ。ボクが面白いと思っても他の人がツマラナイと思えば番組は終わる。常にマジョリティだけを追いかけて日本のテレビは視聴率の道を突き進んできた。そのせいで、誰もが好きな時に好きな番組を見られるネット動画にお株を奪われている。マイノリティを切り捨てて「俺たちの作るテレビを黙って見てりゃいいんだ」的な”上から目線”がテレビを崩壊への道へ導いた。

人気店の売上が上がろうが下がろうがお客にとってはどうでもいいことだ。美味しい料理を食べられればそれでいい。なのに人気店の前には長い行列がでた行列を見て、その行列を目安にして美味しくもない料理をインスタに投稿して「美味しかった!」という人が増えている。「視聴率のいい番組はいい番組だ」と言っているに等しい。普段から個性だ多様化だと言っている割には”他の人と一緒がいい”日本人の心理がすぐに現れてしまう。まぁそれで本人が心から「美味しい!」と感じているのならそれは幸せなことだが。

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