拒否権ってなんだ?

アメリカの議会が出した決定に「拒否感を発動する!」と大統領がツイートした。”拒否権”、一部の権力者にそんなものが認められるのなら議会制民主主義などクソくらえだ。

第二次大戦の教訓から国際連合が戦後に作られた。「教訓を生かして」などと言えば聞こえはいいが結局のところ第二次大戦の戦勝国の利益を守るために作られたようなものである。その証拠に国連安全保障理事会では5大国に拒否権が与えられている。5大国とはアメリカ、ソ連(現在のロシア)、イギリス、フランス、中華民国(現在の中国)である。国際連合が設立された1945年から74年間も続いている国連のルールだ。安保理でどのような採決がされようとも5大国の1つでも反対すれば否決される。国連設立以来、実に270回もの拒否権が発動されている。他の国の多くが「賛成」と言っていても1人のガキ大将が「そんなのは許さねぇ!」と言えば全員がガキ大将の言うことを聞かなければいけない決まりだ。

拒否権の歴史は古い。2000年前の古代ローマ時代の議会にも拒否感があったという。それは一人が全員の意見を拒否できるわけではなく偉い議員が偉くない議員の意見を潰せるようなものだったらしい。このあたりは現代の組織で部長が係長の提案をこともなげに闇に葬るさまを見ても「なるほど」と思わせる。いつの世も下っ端はボスに従うしかないのだ。しかしそれが未だに世界でもかなり有名で力を持っている国連において70年以上も続いていることは驚き以外の何物でもない。

実は日本の株式会社にも拒否権は存在する。”拒否権付き株式”というのがそれで、発行するときには通常は1株だけ発行され「黄金株」などと呼ばれたりする。例えば株式会社が事業継承などで新しい経営者に代替わりするとき、通常の株式を譲渡することで経営権は引き継がれるが、引き継いだドラ息子が”何をしでかすかわからない”というようなときに先代の経営者が息子たちにバカなことをさせないためのブレーキとして拒否権付き株式を持ったりする。その場合、新社長である息子が取締役を巻き込んで会社の経営を揺るがすような経営方針や施策を打ち出そうとしても、お目付け役としての会長が手綱を引いてストップさせられるわけだ。積極的に動かすことはできなくても拒否権があるだけで「先代の望むようにしないとダメだ」ということになる。だから拒否権を使い過ぎれば実質的な独裁体制になってしまうことさえある。だから日本の会社法では拒否権付き株式の発行は非上場企業にだけ認められている。

民主主義の大原則は”多数決”だ。一番多くの人が賛成したことに物事が決められるというのが基本である。もちろんマイノリティの意見には耳を貸す必要がないと言っているわけではない。マジョリティの意見もマイノリティの意見も議論の俎上に乗せてみんなで話し合ったうえで提案を修正したりして最後には決議して多数意見を選択する。それが議会制民主主義の根幹であり一番多くの人がよりハッピーになるためにはより良い方法だということになっているからだ。

しかし世界には多くの独裁国家があり良くも悪くもその枠組みの中で国家が動いている。”独裁政治だから悪い国”というわけではない。国民みんなの幸せを願い、いい国を作ろうと頑張るいい王様がいい政治をしているならそれは幸せな国だろう。しかし自分のことばかりを考えて国民のことを顧みなければいい国とは言えないかもしれない。事実、過去にはフランス革命やロシア革命によって絶対君主が追われた。

拒否権は民主主義をある意味で否定している。みんながいいと思って決めた事でも一人の権力者が「それはダメだ」と言えば一気に覆されてしまう。それでは話し合うことがバカバカしくなってしまう。事実上、今の日本の国会も与党の絶対多数が変わらない限り野党がいくら意見しても必ず拒否される。もっとも日本の国会議員は国民が選んだマジョリティの意見なのだから基本的に民主主義の上に成り立っている。与党の事実上の独裁政治を選んだのは日本国民だ。

議会での絶対多数は自由な意見の交換を阻害する要因だ。与党は「安定した政権」「決められる政治」などと言うが不安定な議会や政治こそが相手の意見をきちんと聞いて議論するための大原則である。我々は自分たちの幸せを与党に丸投げしていないでちゃんと今や将来を見据えた判断をするべき時なのではないかと痛切に感じている。

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