エージェントを使っていますか?

エージェント:agent、「代理人」のことだ。映画や小説などに出てくると何やら怪しげな雰囲気が出てくるが一般にはどこの世界にもよくある職業である。よく聞くところでは広告代理店や保険代理店、旅行代理店などは使ったことのある人もいるだろう。不動産屋や税理士、弁護士も一種の代理店である。人が何かをしようとしたときに、自分でやるのが難しかったり面倒くさいと感じた時にその道の専門家がいる代理店に業務を丸投げするわけだ。ボクは基本的に代理店があまり好きではないので、法律で定められていて代理店にしかできない業務以外はできる限り勉強してでも自分でやりたいタチである。そうすることで今まで知らなかったり気付かなかった物事の裏側を垣間見ることが出来たりするので、意外と楽しいのだ。

旅行エージェントと言えばいわゆる旅行代理店である。JTBや日本旅行、近畿日本ツーリストなどは日本に割と古くからある大手代理店だが最近ではHISなどの格安旅行を売りにしているところやネット専門の旅行代理店もたくさんある。旅行代理店は”旅行会社”などとも呼ばれ、まだネット予約などなかった頃には旅行に行く際には絶大な人気があった。今では家のパソコンやスマホひとつでエアラインや鉄道、バスからホテル・旅館、挙句は遊園地や動物園などのアメニティまで予約できてしまうが、それまではJRの予約をするには駅の窓口に並び、航空券を買うには航空会社の窓口に並び、宿泊の予約をするにはホテルや旅館に個別に電話しなければならなかった。そんな時代にJRや航空会社の端末があってホテルまで選んで予約してくれる旅行会社はいわゆる”ワンストップ・サービス”として便利な存在だった。

そんな便利な旅行会社だったが、小学生の頃、両親に連れられて旅行会社に旅行の予約のために行った時のこと、担当のお姉さんに「予約する手数料っていくらなんですか?」と訊いたことがある。するとお姉さんは「タダですよ」とにこやかに答えてくれた。そんなはずはない!ボクは思った。これだけ手間をかけていろいろやってくれているのにお金を取らなければこの人たちの給料はどこから出ているんだろう?と。まだ汚れを知らない純真なボクがそこにいた。

やがて縁あってボクはホテル業界で仕事をすることになった。新規開業するホテルの開業準備室に入ったボクは毎日JTBや日本旅行などの大手代理店やJR東海ツアーズなどの鉄道系旅行会社、日本航空、全日空などの航空会社の窓口を廻って営業をすることになった。その時に初めてホテルや航空会社、JRなどと旅行代理店の蜜月関係を知ることになる。

ホテルなどというと広告さえ適当に出しておけば後はお客さんが勝手にやって来るものだと思っている人も多いだろうが、その陰では宿泊や宴会、レストランなどが他のホテルとお客さんを取り合って熾烈な戦いを繰り広げている。今でこそお客さんがネットを使ってホテルを予約するケースが多くなったが、かつてはその予約のほとんどが旅行代理店経由で入ってきていたのだ。今でもパックツアーや高齢者の個人旅行などでは旅行代理店に相談する人が多い。もちろん今でも旅行代理店が”予約手数料”を取ることはないし料金だって直接予約を取った時と同じだ。じゃああの窓口にいる人の給料はだれが払っているのかといえばホテルや航空会社、鉄道会社からのキックバックから支払われているわけだ。

ホテルや交通機関は旅行会社から予約が入って実際にお客さんが利用すると旅行会社に料金の一定割合をキックバックする契約を結んでいる。だから旅行会社にすればたくさんキックバックしてくれるところには優先して送客したくなる。儲けが大きいからだ。もっとも実際はどこでも業界ごとにマージン率はほぼ決まっているのでそんなアコギなことはしない。しかしお客さんが窓口にやってきて「ディズニーランドのホテルに泊まりたい」と言われればそこを最優先して予約するし旅行会社もホテルを探す手間は減るのでありがたい話だ。だから人気のあるホテルはバックマージンを安く契約する傾向がある。人気のホテルにしてみれば旅行会社に頼らなくてもお客さんには困らない。旅行会社にお金を払うということは自分の儲けが減ってしまうことになる。ホテルやエアライン、鉄道などではエージェントに販売を委託する際には一般的に数%~10%くらいのキックバックを支払っている。当然のことだがお客さんに直販した方が利益は多い。だが人気のない宿は旅行会社の営業や販売力がないと部屋が売れないので旅行代理店に頼る。

最近では「どこよりも安い」という旅行エージェントやエアラインの比較サイトもよく見かけるようになった。しかし直販より安いところは基本的にない。そりゃそうだろう。旅行会社にキックバックを払った上に、儲けの少ないところに安く卸す必要などないからだ。キャンペーンなどで旅行会社が身銭を切ってホテルや航空券を売っているのでなければ直販より安くなるわけがないが、旅行会社は赤字を出してまで安売りする必要などないので販売価格は”定価”のままだ。

だからホテルや航空会社に直接予約を入れるよりも安く予約することなどできない。海外旅行などでは複数の航空会社の料金を比較するサイトなども見かけるが、特に海外の航空会社の料金は流動的で日程やルートによって大きく変わることが多い。そんな状況まで比較サイトがフォローしていることは少なく、ヨーロッパに行くときはKLMやエールフランスが比較的安くて早いとかルフトハンザはちょっと高いなどの傾向を経験値として知っておきながらその時の状況でいろいろな航空会社のサイトを巡って最適なルートを探す方がいわゆる”便利サイト”を信用するよりも確実だ。

どこの世界でも産地直送は中間マージンがない分、柔軟で安いことが多い。面倒をいとわないのであればよくよく考えて自分で探してみることをお勧めしたい。それは意外なところでお得で面白い情報が見つかったりするので楽しい時間でもある。

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