『プロ仕様』って何だろう?

安売りで有名な大手精肉販売チェーン店に行くと「プロ仕様」と書かれた食材がたくさん売られている。元々は飲食店などの”プロ”に向けた商品を取り扱っていた名残なのかもしれないが、そもそも本物のプロだけが買いに来る店にわざわざ「プロ仕様」と表示した商品を置く意味はない。プロは「プロ仕様」などと書かれていなくても自分の眼で見て品質や値段が妥当だと思うものを選んで仕入れていくのだから。つまり「プロ仕様」という表示は”アマチュア”つまりシロウト向けに付けられているわけだ。

ボクも若い頃には「プロ仕様」と書いてあるだけで安くて高性能なプロが選んで使うもののような気がしていた。食材もなんとなく他のものより美味しいのではないかと思っていた。プロが不味いものを使うわけがないと思っていた。しかし社会に出ていろいろな職業を経験するにしたがって”プロ”とはそんな綺麗ごとだけの世界ではないことが分かってきた。もちろんプロと呼ばれる人の中には確かに一流の人もいる。選りすぐりの食材に一流の技とセンスで素晴らしいものを作り出す人も多い。しかしプロの世界は”ボランティア”ではない。お客の評判がよく適正な利益が出てこそ商売が成り立って事業を続けていかれる。

「高いものはいいものだ」と思っている人は多い。しかし正直なところ高いものが必ずしも優れたものでないことを経験した人も多いだろう。だが一方で「いいものは高い」というのは厳然とした一般的な事実だ。基本的に適正な商売をやっていこうとすれば「安くても希少でいいもの」というのは存在しない。もちろんご近所さんや知り合いのお店から貴重な「掘り出し物」を手に入れられることもあるが、それは善意や好意に基づいた行為であって”商売”ではないことが多い。

ところが希少どころか大量にあるのに”いいもの”はたくさんある。”旬”のものだ。工場で作られる製品でなければ物には”旬”がある。魚や野菜は収穫に適した季節には市場に大量に出回る上に安くて美味しい。色や形もよく「やっぱり旬のものは美味しいね」と言われる。魚介類ならカツオやサンマ、サケ、牡蠣などは季節ものとして有名だし、野菜だって白菜や筍、菜花などは旬になれば素晴らしく美味しいものが安く食べられる。いや旬でなければ手に入らないものさえある。

ところがまだ旬ではないのに「初物」などとして高値で取引されるものもある。特に季節感が強烈なスイカや初ガツオなどはその一つだ。これは他の人に先んじて季節を先取りしているという優越感だけで購買意欲が刺激され、まだ数が少ないうちに多くの人が欲しがるから価格が高騰するだけで、旬真っ盛りのものと比べれば味も見た目も見劣りする。葛飾北斎の有名な浮世絵「神奈川沖浪裏」は初鰹を江戸に運んで金持ちに高値で売り捌いて儲けようとする漁師を描いたともいわれている。”高くてもよくない”ものの典型だ。

本物のプロは旬にこだわる。中身が本当にいいかどうかにこだわる。旬のものは安くていいものが多いしその時期にしか食べられないものだったりするので本物のプロが吟味して仕入れてくる。逆に初物などは”縁起物”としてちょっとだけ出すことはあっても「まだ旬じゃないからね」と最盛期よりは劣っていることを正直に告白した上で提供したりする。

最近はそんな初物やレアものばかりに目を奪われて本当に美味い旬のものを”安物”だといってバカにする人さえいる。いかにも勿体ないことだ。安くて美味しいものや優れているものを見極めるのが本当の目利きなのであって「プロ仕様」と書かれたものを買うのがプロなのではない。その証拠に「プロ仕様」の商品はシロウトや”安かろう悪かろう”のものを売っている”似非プロ”ばかりに人気である。

「プロ仕様」、よくわからない言葉である。

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