オラこんな村、嫌だ

事あるごとに「日本は狭い国だ」と言われる。国土が狭い上に人口が多く過密だと言われている。確かに首都圏に住んでいると人口は過密のように感じている。しかし日本の国土は世界の人が言うほど狭くはない。資料によれば日本の面積は377,972㎢でフランスの551,500㎢やスペインの505,992㎢に比べれば小さいが、ドイツの357,121㎢やイタリアの301,336㎢と比較すればやや広い。ましてやオランダの37,354㎢やベルギーの30,528㎢と比べれば10倍以上の広さがある。意外なことだがオランダやベルギーは北海道の半分の広さもない。もっとも比較的平野が少なく山がちな地形のために平野部に人口が集中しているため日本の都市部での人口密度は非常に高い。

また単に人口密度だけを比較してもフランスは日本の0.34倍、スペインは0.27倍、ドイツでさえも0.90倍だ。ヨーロッパ主要国の中で日本の人口密度を超えているのはオランダの1.29倍くらいである。しかもアルプスやピレネーなどの山地を除けば比較的平野の多いヨーロッパでは、人口が広い範囲に分散しやすいためか日本に比べると混雑が少ないように感じる。

それにしても東京圏の通勤ラッシュの状況を見るとあまりにも混雑率が高いのではないだろうか。大都市圏でも大阪圏や名古屋圏の状況を見ると東京圏と比較して通勤にかかる時間も混雑率も東京のそれとは比べ物にならないくらい緩やかな環境である。最近では東京圏のラッシュもやや緩和されてきたと言われるがそれでもラッシュ時に電車の中で新聞を読むことは非常に困難だ。背の低い人などは混雑による周囲からの圧力で息をすることすら苦しい状況になることもある。欧米では電車の中でも他人と接触してしまうことは不快なことだといわれるが、東京でそんなことを言っていたら電車に乗ることもできない。

しかし日本全国を見れば数年前から人口は減少局面に移ってきている。特に若者が減り労働人口も減少の一途である。地方都市や山間部、離島でも人口減少に歯止めがかからず限界集落が増えている。そして今後40年の間には自治体の約半数にあたる900もの自治体が消滅するという試算も出ている。一方で東京都だけは人口の微増傾向が続いている。これは言うまでもなく人口が東京だけに集中してきているということに他ならない。東京以外の地域から東京に人が流入してきている。地方に行けば街中で人を見かける事さえ稀な地域がある一方で、東京では道をまっすぐ歩けないほどに人で溢れかえっている。これはどう見ても健康な都市の姿ではないと思う。

今、日本中で町おこしが盛んになっているが効果の出ている地域は少ない。町おこしといっても単に人口を増やそうとしても増えるものではない。その町に住みたい、その町で暮らしたいと思わせるには何らかの強い必然性が必要だ。首都圏や大都市圏に住んでいればある意味、便利で快適な生活が送れるが寒村や離島に住めば日々の買い物すら都市のような便利さはない。ファッションやグルメの楽しみもスポイルされることが多くなり一般的な娯楽の種類も少ないことは目に見えている。それでもなお大都市にはない魅力を感じて地方に移住する人は増えている。特に定年を過ぎて通勤する必要のなくなった人々には常に緊張を強いられてきた都会よりも静かで落ち着いた生活のできる地方が魅力的に映るのだろう。

もちろん若者が都会に憧れる気持ちはよくわかる。地方都市に育ったボクも若い時分には東京が魅力的に映っていた。あれから30年、東京に勤め続けていると次第に「もういいや」という気分になってきた。確かに東京にいれば便利だがもはやそんなに便利ではなくてもいいや、という気分になってきたのだ。東京で暮らしても毎日通うのは職場だけで、渋谷や新宿、銀座や南青山に毎日行くわけでもない。通勤で地下鉄に乗っていても「この上には銀座があるのか」「ここは青山通りの下か」などと思うことすらなくなる。ただの窮屈で臭い地下を走る電車に乗ることには何の魅力もない。

それでも日本人は好き嫌いにかかわらず東京に集まってくる。集まらざるを得ない事情もある。これは東京に限らず東アジアや東南アジアの国で多く見られる現象だ。中国でも韓国でもフィリピンでもベトナムでもタイやマレーシア、インドネシアでもアジアでは都市部には非常に多くの人が集中する。そして人口が集中し混雑した町は汚れ、猥雑で犯罪に溢れる。それでも後から後から人々は途切れることなく列を作って都市に集まってくる。まるで前を歩くものの尻を追いかけるアリの行列のように。

それを「活気」と言うならそれでもいい。しかし活気とはそんなものなのだろうかとふと疑問に思う今日この頃だ。

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