スマホ市場の終焉

昨年あたりからiPhoneだけでなくスマホ全体の出荷台数が大きく減少傾向にあるという。業績予想を下方修正するスマホメーカーが相次いでいるというがそれは米中の貿易摩擦問題だけの話ではない。もうスマホが欲しいと思う人や持つべき人の需要が飽和状態なのだ。もちろん地球上にはまだスマホのメリットを知らない人もいないわけではない。しかしその人たちにメリットをアピ-ルしたところで今すぐに使い始められるインフラが整備されていなければ使いたくても使うことはできない。かつてのテレビや冷蔵庫がそうだったようにすべての人がが持つような時代になれば新規需要がなくなるのは当然の話だ。残されているのは買い替え需要だけだ。

日本ではテレビの地上波が政府の方針で一斉にデジタル化されたことでテレビに大きな買い替え需要が発生した。その時でさえほとんどの人はテレビを買い替える必要など感じていなかった。「今のテレビでは映らなくなります」と言われて”仕方なく”買い換えただけだ。結果的に流される映像はキレイになり「せっかくだから」と大画面のテレビに買い替えて満足した人も多かったかもしれない。しかしそれは”政府の方針”に仕方なく従って”無駄遣い”だと思えるような出費を負わされた結果に過ぎない。

スマホは一般社会に普及し過ぎた。決して商品ライフサイクルの終焉がやってきたわけではまだないと思う。しかし新発売直後の狂乱景気の時期が過ぎたことは確かだ。ライフサイクルは成熟期を迎えている。ライフサイクルが”普通”に戻っただけなのだ。これが大衆を相手にしたビジネスの「普通」である。なのにメーカーも通信会社もまだバブルにすがりつこうと必死になっているのはとんだお笑い草だ。

米・Appleも一部のコアユーザーだけを相手にしていた頃は良かった。Macコンピュータは一部の熱烈なAppleファンには限りなく支持されていた。どんなにくだらないプロダクトを出しても大喜びで買ってくれる人がいてそれで商売が成り立っていた。しかしプロダクトはパソコンだ。誰が何といっても世界中の大多数の人が使うものではない。人類全体から見ればニッチ市場に過ぎない。だからそれでも良かったのだがスマホに至っては地球上で誰もが使っている”電話”である。電話を知らない人がいないように今、街を歩けばスマホを持っていない人などいない。かつては電話も一部の”特権階級”だけに許された贅沢だった。しかし今ではかつて電話線さえも引かれていなかった地域の人にまで携帯電話として広がった。完全に”必要不可欠のインフラ”になった。

一家に一台の固定電話が引かれていた頃、家の電話機を買い替える家庭はほとんどなかった。電電公社から借りたまたは買った電話機を延々と使い続けていたしそれに不満も感じていなかった。それなのに携帯電話会社は「なぜ買い替え需要があるはず」と思うのだろうか。もちろん一つにはバッテリーの寿命に伴うデバイスの寿命がある。しかしそれは「買い換えたい」と思う動機にはならない。”仕方なく”買い替えざるを得ないだけだ。電池だけ交換してくれれば買い替えなくて済むのなら”無駄遣い”などしない。
みんながスマホに飽きてきている、というより日常になりすぎた。新しい洗濯機が出たからといってすぐに買い替える人は少ない。最新式の冷蔵庫が発売されたからといっても既に自分の家に冷蔵庫があれば「欲しい!」とはあまり思わない。それが成熟期の商品だ。

最初はスマホも珍しいおもちゃだった。新しい機能が付いたから、性能が良くなったからといっては毎年のように買い替えていた人も、既に普通の日用品と同じになり性能も機能もほとんど変わらないのなら買い替える必要もないし買い換えようとも思わない。まだ今のところは商品のライフサイクルが終わりに近づいているわけではないが買い替えのサイクルは長くなって他の商品と同じように普通になった。祭りは終わったのだ。とりわけIT製品の買い替えサイクルが長くなっていくのは自然なことなのだ。

コンテンツ戦略ではアップルよりアマゾンの方が有利になってきた。デバイスに依存しているサービスよりも消費者はよりユニバーサルなサービスを選ぼうとする。音楽も動画も電子書籍もAppleの囲い込み戦略は限界にきている。もっともだからといってGAFAが4社連合を作ったらたぶん独禁法に引っかかるのは確実だろう。これらのサービスもだんだんと飽和状態になっている。

デバイスを買い替えさせたいなら消費者に「欲しい!」と思わせなければダメだ。多少液晶画面が大きくなったり画面が折り曲げられるようなった程度では商品の魅力はもはやない。何らメリットが感じられないのでは「欲しい!」という気持ちは動かない。新しいおもちゃを手にした子供がはしゃぐだけだ。「楽しい」だけで生活必需品は買わないということは誰でも知っていることだと思っていたのだが、携帯電話会社の人はあまり分かっていないらしい。

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